2021.01.20 第435回東三河産学官交流サロン 1.日 時 2021年1月20日(水)18:00~19:30 2.場 所 ホテルアークリッシュ豊橋 5階 ザ・グレイス 3.講 師① 豊橋技術科学大学 副学長 山本 進一 氏 ◎テーマ 『多様な木と森-生物多様性の科学-』 4.講 師② NPO法人東三河フードバンク 副理事長 片桐 逸司 氏 ◎テーマ 『もったいないをありがとうに-東三河フードバンク-』 5.参加者 59名(オンライン参加 13名含む) 開催案内(ダウンロード) ※新型コロナウイルス感染拡大防止を考慮し、飛沫感染防止のため飲食のご提供は「中止」とさせていただき、19時30分終了予定といたします。 講演要旨① 本日は私の専門分野である「森林生態学」についてお話しさせていただいたく。 「草」と「木」の違いは何か?植物には草本植物と木本植物があり、木本植物は維管束形成層による二次肥大成長を行う(リグニンで細胞を固める)ものである。椰子や竹も木で、堅くて何年間も枯れない茎を持つ木部はあるが、維管束形成層がないので二次肥大成長はしない。広葉樹が被子植物の双子葉類であるのに対し、椰子や竹は被子植物の単子葉類である。ちなみに、被子植物はすべて木である。 「イチョウ」は英名で「Ginkgo, Maidenhair Tree」であり、葉の形がアヒルの足に似ているので中国語の「鴨足(イーチャオ)」の転訛、「ぎんなん」は唐音読み「ぎん・あん」の連声による転訛という通説がある。英名は「銀杏」を「ぎんきょう」と間違って読んだ上に、Ginkjo(ギンキョウ)、Itsjo(イチョウ)と書いたつもりが、製本時に誤植されたものが使われているようである。 樹木(木本植物)の特性として、世界一長寿の生物は「ブリッスルコーン・パイン」(4844年)、世界一重い生物は「ジャイアント・セコイア」(2030t)、世界一背が高い生物は「コースト・レッドウッド」(112m)、世界一太い生物は「バオハブノキ」(直径13.7m)であり、「イチョウ」は2億年以上前から姿形を変えない生物で、一属一種、生きた化石である。樹液上昇のメカニズムであるが、コースト・レッドウッドは30数階建てのビルに相当する。水柱は10mで約1気圧に相当するので、112mでは11.2気圧になり、仮に断面積が手のひらよりも少し小さい100㎠のパイプを用いると1120㎏、少なくとも1t以上の力が必要となり、さらに給水抵抗や摩擦抵抗がある。 「森林」は、陸上植物群落のうち木本植物が優占し、群落の高さが概ね人間の目を超えるものをさし、林地と林木の総称である。「森」と「林」の違いは何か?森は自然にできたもの、林は人工的なものと捉えられるが、学術用語や合成語にはほとんどの場合「林」を使う。 世界の植生は気候によって分別される。東アジアの森林植物は、東シベリアのカラマツ林(亜寒帯)、日本の常緑広葉樹(照葉樹)林(温帯)、マレーシアの熱帯多雨林(熱帯)で、日本の森林植物には「暖温帯常緑広葉樹林(照葉樹林)」(豊橋)、「冷温帯落葉広葉樹林(夏緑樹林)」(茶臼山)、「亜寒帯(亜高山)針葉樹林」(中央・北アルプス)がある。 「照葉樹林」は、シイやカシなど常緑性の樹木が作る鬱蒼とした森であり、「照葉樹」は暖温帯に見られる常緑広葉樹の中のグループで、テカテカと光る厚い葉を持ち、クチクラ層が発達したもので「ツバキの葉」が一例である。また、「ブナ林」は冷温帯の極相林であり、高木層(ミズナラ等)、亜高木層(コシアブラ等)、低木層(オオカメノキ等)の落葉樹種が混交する。 地球上の生物は、約40億年に及ぶ進化の過程で多様に分化し、生息場所に応じた相互の関係を築きながら、地球の生命体を形づくっており、このような多様な生物の世界を「生物多様性」という。生物多様性には、「遺伝的多様性」、「種多様性」、「生態系の多様性」がある。 熱帯多雨林は「種多様性」が高く、巨大な現存量を持つ。熱帯林の非木材林産物には、コショウ、ラン、沈香(ジンコウ、チンコウ:香木)がある。大河ドラマ「麒麟がくる」の中で登場した「蘭奢待(らんじゃたい)」(国宝)は、天下第一の名香と謳われる。「沈香」は、熱帯産のジンチョウゲ科アキラリア属の常緑喬木の幹から採取される香木であり、インドからインドシナに分布し、ベトナム産が最も評価が高い。 現在、様々な生態系の破壊、生息地(ハビタット)の消失が進んでいる。生息地の消失は、そこに生息する生物の局所的絶滅を意味する。価値という側面からも、自然の生態系は保全していく必要がある。 講演要旨② 「NPO法人東三河フードバンク」は、設立間もない団体である。2019年春に話が持ち上がり、一年がかりで準備を行い、2020年6月に認可、設立された。 2020年10月18日付けの朝日新聞の記事で、19歳のひとり親が、収入もなく、身寄りもなく、食べ物もなく、大阪のフードバックが手を差し伸べたという記事を読んだ。日本の相対的貧困率は15.8%となっており、世界平均の11.7%よりも上になっている。日本文学研究者のロバート・キャンベル氏は、学校におけるいじめや就職問題を背景として、「日本の貧困は“見えない貧困”である」と言っている。 フードバンクとは、個人や企業、団体から寄付された食品を、支援を必要とする世帯などへ無償提供する活動であり、食品ロスと貧困という社会的課題に同時にアプローチできる仕組みである。また、食を通じて子どもの未来を応援したい、支援を必要とする世帯へ確実に届けたい、常に食を提供できる環境を整えたいという、「食のセーフティネットの構築」を目指しており、貧困だけでなく自然災害時にも役立てたいと考えている。 平成28年の「豊橋市子ども調査」の結果、16人に1人の子どもが貧困の状態であることがわかり、この結果を踏まえ、平成30年度より豊橋市が助成し、豊橋市社会福祉協議会にてフードバンク事業を開始したが、新型コロナウイルス感染拡大のもと、常に食品の在庫を持ち、渡せる仕組みを構築する必要があるとの観点より、豊橋ライオンズクラブのメンバーを母体とした「NPO法人東三河フードバンク」が設立された。なお、食の支援及び食品ロスの削減を目的としたフードバンクの取り組みの普及促進を図るため、令和2年6月30日付けで豊橋市、豊橋市社会福祉協議会と「三者協定」を結び、現在、豊橋市職員会館を拠点に活動を開始している。 2019年5月24日に「食品ロス削減推進法」が成立、10月1日に同法が施行された。食品業者廃棄量目標は、2030年度末までに2000年度末の1/2(273トン)、商習慣における1/3ルールの見直し(廃棄コスト削減)となっている。また、毎年10月は「食品ロスの削減月間と」なっており、10月30日は「食品ロス削減の日」となっており。その他、全国組織の「ドギーバック普及委員会」、「30(さんまる)・10(いちまる)運動推進」などが展開されている。また、SDGsの①貧困をなくそう、②飢餓をゼロに、⑫つくる責任つかう責任、にも取り組んでいく必要がある。 寄付をいただきたい食品等は「ドライ食品全般」で、食品は賞味期限が明記され、1ヶ月(出来れば2ヶ月)以上残した食品である。食品の配布申し込みは、市役所の窓口、総合福祉センターの窓口を通して東三河フードバンクへ連絡していただくことになる。これは、申込者の個人情報について、NPO法人として関わりを持たないようにしているためである。 参加方法は、①食べ物の寄付、②お金の寄付、③時間の寄付(ボランティア活動)、④プロボノ活動となる。正会員(運営への参画/総会の議決権)、賛助会員(活動への参画/事業の支援)として、是非ご支援、ご協力をお願いしたい。 これからの課題は、豊橋地区を重点として基礎を固め、東三河全域に事業を拡大させていくこと、認定非営利活動法人を目指すこと、常時食品在庫をストックして随時配布可能を目指すこと、新しい仕組み(行政の情報力、民間の機動力、企業の資金力)での貧困撲滅目指すことである。