2021.02.17 第436回東三河産学官交流サロン 1.日 時 2021年2月17日(水)18:00~19:30 2.場 所 ホテルアークリッシュ豊橋 5階 ザ・グレイス 3.講 師① 愛知大学 地域政策学部 教授 鈴木 誠 氏 ◎テーマ 『地域防災論と大学の役割-南海トラフ地震を想定して-』 4.講 師② 一般社団法人奥三河ビジョンフォーラム 専務理事/株式会社田村組 代表取締役社長 田村 太一 氏 ◎テーマ 『いま、奥三河がおもしろい-受け継がれていく中山間地-』 5.参加者 77名(オンライン参加 21名含む) 開催案内(ダウンロード) ※新型コロナウイルス感染拡大防止を考慮し、会食は中止とさせていただき、19時30分終了予定といたします。(会費の徴収はございません) 講演要旨① 震度6クラスの地震が起きたらどうなるか?地震は日頃の備えをひっくり返してしまう。大学としてどういうことが出来るのか?正しく備え、それをリピートすることが大事である。私は、愛知大学特別重点研究「南海トラフ大地震を見すえた自然大災害と地域連携を踏まえた大学BCPの総合的研究」(2017年度~21年度の5年間)の第2部門「災害と地域・大学連携部門」を担当した。 避難所として大学はどう機能したのか?先進事例として、石巻専修大学は東日本大震災時、石巻市との「包括連携協定」に基づいて避難所を開設し、1200人強を受入れ、市が人手不足のため、教職員主体で避難所を管理した。また、熊本学園大学は熊本地震発生時、750名の地域避難者、近隣の60名の障がい者を受入れ、自主避難所を開設。施設提供だけでなく、学生の自主活動を学長・教職員が支援し、外部ボランティア、近隣の医療機関、社協・福祉NPOも参集して避難者の日常生活を大学施設内で支援した。 大学BCPの「1丁目1番地」は、安否確認である。被災後は通信状態が最悪となり、初動対応は幾多の困難に直面する。非常用通信手段の整備強化と非常用通信手段の使用訓練に取り組むことが必要である。大学では教職員のうち無事が確認できた者が協力して、1ヵ月以内に全学生(1万人)の安否確認をやり遂げることがBCP上重要である。安否確認は、生存確認だけでなく「大学業務継続」へ転換していくべきであり、安否確認システムの導入、1ヵ月以内に安否確認をやり遂げるための体制づくり、災害伝言ダイヤル「171」への理解促進と訓練への導入などの課題を解決する必要がある。 愛知大学豊橋校舎は市街地に位置し、避難所として期待されている。2019年2月、栄校区自治会加入世帯すべてに対して「災害における大学と地域の連携に関するアンケート調査」を実施した結果、約600人弱の地元住民が愛知大学を避難所の候補に想定していることが分かった。また、大学には「避難場所の提供」「食糧・水等」「学生ボランティア」を期待しているほか、地域の指定避難所に学生が避難することを90%以上の回答者が認めてくれていること、ペット飼育者の60%が避難所へ同伴することなどが分かった。大学と地域が相互協力し、互恵的関係を築く必要が急務であり、それと同時に大学が地域連携型BCPを、地域は地区防災計画を策定すべきである。また、大学と地域が協力し、女性の避難生活への準備を意欲的に進めることが必要である。 避難所は被災初期の安否確認と被災者救済の最重要場所。その運営次第で、災害関連死を減らせ、生活再建の見通しづくりを促せる。そのため、従来の機能主義的な運営を改め、「その場コミュニティ」=人が集まった場所で課題解決を行える人のつながりをつくることが重要である。 講演要旨② 奥三河ビジョンフォーラムは、「時代に先駆け、個性ある故郷を創造する」という理念のもと、1985年に設立され、「観光」「森林」「エネルギー」「人材」をテーマに、「奥三河4市町村」「豊川の上下流域」「都市と山村」それぞれの地域をつなぐ役割を担っている。 本日の講演のきっかけは、「ナゴヤ2030」(出版:桜山社)という書籍に、2030年の中山間地のあり方として「奥三河と名古屋の二拠点生活が当たり前の社会に」を掲載したことである。 2020年6月~12月の「奥三河の観光施設における体験プログラム参加者数」は、マイクロツーリズムにおける、名古屋、尾張、西三河地区からの参加者が多い。今後は、県境域の参加者を増やしていくこと、リニアの開通により豊根村が玄関口となることから東京・大阪圏の方々を集客することがポイントである。 「キラッと奥三河観光ナビ」へのアクセス数は、コロナ禍の影響もあるが、2020年8月は前年比145.1%増、9月以降は40%増で推移しており、名古屋市、大阪市、横浜市からの流入が伸びている。この状況をDXの活用などで地域とどう繋げていくかは今後の大きなテーマである。 「転入転出数」(2019-2020比較)は、転入者が93名増、転出者は6名減となっている。コロナ禍におけるリモートワーク、風の人(定住を前提としない人)の影響が考えられる。東栄町では2015年の「体験型ゲストハウスdanon」の開業、2016年の「地域支援課」の設立をきっかけに2019年に「社会増」となり、現在も官民一体となった移住定住に係る各種取組みが行われている。 奥三河での新たな動きとしては、次のものがある。 ①地域おこし協力隊と三河の里山サポートデスクによる「近年の移住者による起業」 ②森林空間が生み出す恵みを活用した「森林サービス産業」(「Forest Style」の創造) ③設楽ダム建設に係る上下流交流の象徴的な場所としての「山村都市交流拠点施設」 ④新産業の集積、地域経済の活性化、地域課題の解決のための「東三河ドローン・リバー構想 推進協議会」 2030年の奥三河の人口は、総数で7,578人、生産年齢人口で5,603人減少すると推計されているが、「こころの過疎にしない」(夢や希望を失わない)ことが大切である。2020年1月に新城市商工会が行ったアンケートでは、「現在の事業を継続するつもりはない(廃業)」の割合が30%となっている。新しい起業やM&Aなどで事業承継の課題を解決する一方、ポストコロナ時代に向けて「価値の再確認」、「地域を開く」、「テクノロジー」をテーマに、古くて新しい暮らし方・働き方で、まちの歴史を受け継いでいくことが大切である。