2021.05.25 第439回東三河産学官交流サロン 1.開催日時 2021年5月25日(火) 18時00分~19時30分(※時間短縮・食事なし) 2.開催場所 ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス 3.講師① 愛知大学 国際コミュニケーション学部 教授 小崎 隆 氏 ◎テーマ 『つち・とち・いのち-環境と経済の「ちょっとイイ関係」を目指して-』 講師② 豊橋市長 浅井 由崇 氏 ◎テーマ 『豊橋新時代に向けて』 4.参加者 95名(オンライン参加 25名含む) 開催案内(ダウンロード) 講演要旨① 「土」というのは馴染みがない。土壌学をやり始めて40数年。「土」の大切さを考えていきたい。 土に対してこの1万年近くの歴史のなかで、我々は何をしてきたのか?エジプト文明は、ナイル川氾濫原を利用して豊かな文明を築いたが、20世紀のはじめと1970年代に大きなダムをつくったことで水量が減り、土壌の変化で生産力が落ちた。メソポタミア文明は、灌漑農業によって生産が上がり大きな帝国ができたが、塩類集積になってしまい、文明が潰れていった。地中海文明は、羊などの家畜の放牧や作物の作りすぎで、土が浸食され生産力がおちた。日本は、奈良時代から木を切り、お寺や神社を建てるために1000年以上にわたり木を切り続け、はげ山になった。 土壌劣化により文明が崩壊する。生産力が下がると国をうまくまとめられない。外敵が来ると負けてしまう。古代帝国がだんだんと潰れていく。その引き金が「土地劣化」。 「つち・とち・いのち」、単に食料を生産するものだけではない。土の中の微生物を含めた状態を維持する、水・飲料水・地下水の質と量をコントロールする、地球温暖化の引き金となる温室効果ガスの発生メカニズムをコントロールするのも「土」、土が調子悪くなると生態系全体がどこかおかしくなる。生態系は我々の命を(人間、動物、植物)支えている。ひずんでくると文明のもとが危うくなるということで、警告を発している。 土壌劣化は、水食、風食、化学的変化、物理的変化、いろんな形がある。安定地域はカナダ・シベリアなど、ほとんど人が住んでいないところ。人が住めば必ず土が劣化する。その速度が非常に早くなっている。地球温暖化と全く一緒。今後は土のことを真剣に考えていく必要があるが、実際どういう問題があるのか? ①湿潤熱帯(東南アジア)での焼畑耕作による養分損失(連続耕作) 対策として、a)混作・等高線栽培、b)土壌表面マルチ、c)低地水田の高度利用、がある。 ②灌漑農業に伴う土地劣化(塩類集積) 塩類集積場所を特定しながら、塩類化回避の研究を進めている。 ③温帯草原の近代大規模機械化農業による土壌有機物の減耗とCO2放出 大規模農業を進めることにより、土の中の有機物、炭素が出てくる。耕す回数の減少、牧草栽培が効果的である。 ④砂漠化 乾燥地域、半乾燥地域および乾燥半湿潤地域における種々の要因(気候変動および人間活動を含む)による土地劣化であり、放牧のしすぎや畑をつくりすぎることが原因である。砂あらしで、養分のたくさん含まれている表面にある粒子が飛んでいき、土地が疲弊していく。砂漠化を防止する研究活動として、「耕地内休閑システム」(防風効果、捕捉効果あり)がある。 その他、災害(地震、津波、火山、ゲリラ豪雨、竜巻)による土地劣化があるが、天変地異の場合、かつては生贄をささげてきた。何を犠牲にするのか?「次の世代」を犠牲にしてしまっている。「Society5.0農業・食品版の実現とSDGs」として、スマート育種システムの構築、スマート農業の創出、スマートフードチェーンの構築、新産業の創出、農業基盤技術、先端基盤技術、研究関連業務があるが、これらを我々がやるか・やらないかだ?環境か・経済か?双方がWin Winの関係になる、そういう産業構造を目指し、新しいいスタイルを考えていく必要がある。近江商人の哲学に、「売り手によし。買い手によし。世間によし」がある。世間とは、環境を含めた全体であり、人間だけに良いものではない。これが、アフターコロナのニューノーマルになる。 SDGsの17の目標に積極的に取り組んでいく必要がある。東三河懇話会メンバーの皆さまのお知恵を拝借しながら一緒に活動を展開し、持続性、経済活性化を目指していきたい。 講演要旨② 11月17日付で第35代豊橋市長に就任した。半年余り経過したが、東三河の首長はじめ、関係各位のご指導をいただきながら職務を遂行している。皆さんにご心配いただいているが、充実した仕事をさせていただいている。3月議会で主な公約であった「給食費の無償化」、「市長の多選自粛条例」、「ユニチカ賠償金26億円を活用したコロナ基金設立」は、私の力不足で市議会の同意を得られなかった。しかし、新年度予算1,341億円、企業・特別会計を合わせた総額2,678億円は全て認めていただいた。組織機構改革では、4月1日から「行政デジタル推進室」の創設、地域の新しいイノベーションを推進していく機構改革、2月1日からコロナ対策・ワクチン接種を進めるための「感染症対策室」の設置を行った。市長に就任し実感したことは、「人事は自分でやらないと駄目だ」と率直に思った。4月から新しい副市長に就任いただき、部長級20名程の半分以上に新しい人材を充てた。また、女性の登用も訴えている。女性が暮らしやすく、活躍しやすいまちづくりが重要。4月1日から女性の部長を任用。市民病院の看護局長に副院長に就いていただいた。まちなか図書館の館長も全国公募し、29歳の女性を採用。これからのまちづくりは、女性や若者を中心に捉え、子育て、教育、働く場所を充実させることで、人が集まり、定着することになる。 1.豊橋市のコロナ対応について 第4波による緊急事態宣言は、おそらく延長されるだろう。変異株であるイギリス型が8~9割以上、イン型も入ってきている。豊橋市としては感染症対策室を中心に全庁を挙げて取り組んでいる。ワクチン接種で収束に向かうと思われるが、今後の対策として豊橋市民病院に令和5年度中に「感染症病棟」を建設することを決定した。また、医師会、薬剤師会と連携した「自宅療養者のための医療提供システム」、コロナ病床逼迫を避けるための民間病院への転院を促進するための財政支援を愛知県で初めて採用した。ワクチン接種スケジュールは、高齢者施設入居者から4月23日に開始。その後は5歳刻みで接種を進める。国からは65歳以上は7月末までに終了とのことで、前倒しで集団接種、休日の民間病院における接種等も検討中。しかし、まだ医療従事者の接種が終わっていない。今、総力を挙げて懸命な努力を続けている。 2.まちなかの魅力とにぎわいづくり 元気な豊橋を振り返る。2015年から2020年の5年間、豊橋市は2,700~2,800人減少。東三河では豊川市が唯一2,000人増加。昭和59年には、ときわアーケードが賑わっていた。広小路では自転車が両側にたくさん停まっていた。人口は32.2万人。豊橋は発言力もあった。 駅前大通二丁目再開発で、まちなか図書館とまちなか広場(emCAMPUS)が完成する。東棟の2~3階にまちなか図書館を開設。11月下旬にオープン予定。開放的でスタイリッシュ、ゾーニングがしっかり出来ており、様々な会話やコミュニケーションが生まれ、新しい価値が創造、発信される図書館となる。館長はNHKの元女性ディテクターの種田さん。豊橋に家族で移住。新しい生き方、ライフスタイルの提案を、東京・有楽町のふるさと回帰支援センターで行う予定。 まちなか広場は、まち歩きの核として、緑にあふれたオアシス空間として生まれ変わる。 まちなかの未来像として、大胆な取り組みが必要。駅前大通についてしっかり取り組む。広小路も含めて変えていく。駅前大通は一車線つぶして木を植えたり、歩道を大きくしてキッチンカーを置いたり、食べ歩き出来る空間にしたい。しかし、駅前大通は「県道」であり、統一的なまちづくりが出来ない。県・市・商工会議所・商店街等でビジョンを共有し、足並みを揃えてまちなみを整備する必要がある。議論する場を早急に設置したい。 【垣根を越えた地域づくりを!】 これからの地域づくりには、広域連携、官民連携が欠かせない。湖西市とは水道事業の連携を行っている。その他、市境を越えた公共交通、観光振興(東三河広域DMOの立ち上げ)、医療連携が必要である。また、ステーションAI、スタートアップ支援、国のグローバル投資など、産業振興も重要。特に「食と農」はアドバンテージあり、実証実験のフィールドもたくさんある。その為にも、道路などのインフラ整備が必要。産学官連携で地域をつくっていくことになる。豊橋市役所の職員には、①現場主義、②真っ当な市民感覚を、③前例主義に陥るな、を常日頃から言っている。豊橋市役所が市民から信頼されるように、大改革を行っていこうと考えている。皆さま方のご支援、ご協力をお願いしたい。