2021.07.02 第213回東三河午さん交流会 1.日 時 2021年7月2日(金)11:30~13:00 2.場 所 ホテルアークリッシュ豊橋 4階 ザ・テラスルーム 3.講 師 東栄町観光まちづくり協会 伊藤 拓真 氏 ◎テーマ 『まちをつくるこれからの観光』 4.参加者 38 名 開催案内(ダウンロード) 講演要旨 「東栄町観光まちづくり協会」とは、5年前、地域おこし協力隊から東栄町に観光協会を立上げて欲しいという声が上がり、2017年4月に設立された。観光は「手段」で、目的は「まちづくり」である。「まちづくり」とは、地域がより良くなるために、地域の力で地域を育てることである。具体的な取組としては、「ヒトむすび」としてのまちづくりの担い手・コミュニティづくり事業(会報誌の作成など)、「モノむすび」としての地域メディア運営事業(Webメディア「東栄町のじかん」など)、「カネむすび」としての地域内経済発展の仕組みづくり(naori事業、ふるさと納税、イベント支援など)がある。 また、観光まちづくりの戦略策定という大きな役割を持っている。町には「東栄町ならでは」の豊富な資源はあるが、認知度が低い。単なる「自然豊かな田舎」は全国いくらでもあるため、他にない「尖ったテーマ」による独自性が必要であるとの認識から、顧客と素材をマッチングさせる仕組みをつくり、地域ブランド構築による面の発信力を高める取組を始めた。ブランド構築の目的は、“誇れるまち”として共感できる地域ブランドの確立、まち全体・地域外の連携構築による発展、集客数でなく付加価値や関わりの濃さを大切にすることで、“地域が続いていく”ために“ありたい姿”を共有することである。 東栄町らしさ・魅力・キーワードとしては、「美と紐づけられるコンテンツ(セリサイトなど)」、「文化や暮らし地域に流れる美のDNA(ありのままの自然、生き方や価値観)」がある。「東栄町ならでは」の美として「生まれ清まり」という言葉がキーワードとして出てくる。鎌倉時代から700年続く「花祭」の根本的思想である。花祭には、八百万の神々を招き、人と一体となる「神人和合」というシーンがあるが、このような文化が多様な価値観が共存し、互いに認め合うという社会に繋がっている。「生まれ清まり」とは、新たな視点に触れ、価値観が変わっていくことである。 「東栄町×美」というキーワードで、五感で感じ、生まれ清まる「BEAUTY TOURISM」を立ち上げた。これは東栄町らしさを発信する「地域ブランド」であり、美を切り口に、暮らしに根付いた文化や自然を五感で感じる体験・商品・サービスを提供する仕組みである。2020年11月21日から25日の5日間の日帰りプログラムとして「BEAUTY TOURISM WEEK」を開催した。企画の目的は、BT事業を進めていく上での目標イメージの共有、プログラムのターゲット設定、少人数高付加価値企画の実験、ブランドコンセプトの明確化、運営収支バランスの検討であった。第1弾の開催結果を受け、第2弾は全てを観光協会で企画する「ツアー形式」から一旦脱却し、各事業者が主体となって行う「自主プログラム支援」に移行すること、また事業者を巻き込みながらプロジェクトを進めていきたいと考えている。 もう一つの取組としては、「自転車事業」。東栄町の立地条件や環境に合致しており、これは「伸びしろしかない」と2017年に発案された。地域資源を活かした「ガイドサイクリング」とは、地元サイクリストが自分たちのおすすめスポット、一押しスポットを自分の言葉で説明しながらめぐるサイクリングであり、その地域をじっくり知ることができる。東栄町は坂が多い土地であることを念頭に、2018年に電動アシスト自転車を活用したイベントを地元団体有志の集まり「ぽたりん」が実践した。結果は良好であり、サイクリングの「活動」から、まちづくりの「事業」に育てていくために「BEAUTY TOURISM」と連携した事業として「サイクリスト歓迎のまち構築事業」(令和3年度東栄町事業)に取り組んでいる。今後の具体的な事業内容としては、東栄町ならではの自転車を使ったまち巡り「とうえい自転車さんぽ」でイベント型ツアー、オーダー型ツアーなどのサービスを提供していきたい。 「BEAUTY TOURISM」の推進により目指す姿は「美しいくらしの共同体(チーム)」であり、地域の暮らしている人、関わる人、訪れる人、それぞれが「美のまちとうえい」を共通認識している状態(有名になる必要はない)になることである。今後は、地元に向けた取組(ブランド育成、実践支援、関係構築)とファンに向けた取組(発信媒体の運用、体験する、関わり代づくり)の両方を実践し、「美しいくらしの共同体」という理想像に繋げていきたい。 自転車をとりまく環境整備だけではなく、まちの魅力・自然体験・文化体験を楽しむ仕組みづくりを行うことで、まちづくり人材の育成、お客さんがお金を落としやすいまちづくり、地域の経済循環に繋がるとともに、「地域がより良くなるために、地域の力で地域を育てる」ことに繋がる。「BEAUTY TOURISM」を進めていくにあたり、今後も当初の目的を忘れずに事業を展開していきたい。