2021.08.17 第442回東三河産学官交流サロン 1.開催日時 2021年8月17日(火) 18時00分~19時30分 2.開催場所 ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス 3.講師① 豊橋技術科学大学 機械工学系 教授 飯田 明由 氏 ◎テーマ 『会話がCOVID-19感染リスクに及ぼす影響』 講師② 株式会社JTB ツーリズム事業本部 名古屋事業部 観光開発シニアプロデューサー 平野 宜行 氏 ◎テーマ 『JTBが進める「食農観光による地域活性化」』 4.参加者 62名(オンライン参加 14名含む) 開催案内(ダウンロード) 講演要旨① 2020年は、インフルエンザや感染症が減っている。これは、COVID-19感染対応によるマスク、ソーシャルディスタンス等が大きな要因である。外部の粒子を吸い込んでしまう割合は、マスクなしを100%とした場合、普通に装着した場合は36%、しっかり装着した場合は17%に減る。 コロナウイルスの感染原因は空気ではない。飛沫・エアロゾル(直径5μm以下の飛沫)を防げば感染しない。 *空気感染:空気中を漂う飛沫核・エアロゾルを介して感染(対策:換気、マスク) *飛沫感染:飛沫を吸引することにより感染(対策:ソーシャルディスタンス、マスク) *接触感染:飛沫・唾液が付着したものに触れた手から感染(対策:手洗い、消毒) エアロゾルのような小さな粒子は空気抵抗係数が大きいため、落下しにくい。無風状態の場合、1μmの粒子が1.5mの位置から落下するにはおよそ10時間かかる。ウイルスの場合、落下するのは3年4か月後となる。また、小さな粒子の挙動(ブラウン運動)は、自分の大きさの100倍ぐらい揺らぐ。 マスクは、フィルターの繊維で粒子が捕集される仕組みであり、孔径は不織布が0.5-15μm、布が200-500μm、ウレタンは50-200μmである。マスクフィルターは、0.3μm付近の捕集が不得意である。会話や咳などにより対外にでる飛沫の速度は2m/sと速く、ウレタンマスクでも40%以上外部への流出を防ぐが、蒸発して小さくなった飛沫(ウイルス)を吸い込むのを防ぐには、不織布マスク(高性能のフィルター)が望ましい。229種類の市販マスクを購入して性能評価の実験を行ったが、普通に装着した場合としっかり装着した場合でかなりの差が出ること、マスクとしての設計が良くないもの、マスクとしての性能が低いものが明らかになった。 人体における主なエアロゾルの生成箇所は、咽頭(声帯・会話)、気管支(咳)、細気管支(呼吸)である。コロナウイルスは、会話による感染が多いことから「咽頭エアロゾル」が原因の可能性がある。会話から出るエアロゾルは呼吸の40倍のウイルスを含む。呼吸をしないわけにはいかないが、会話や歌唱は最低限に抑えられる。臨床的な知見では、会話が多い場面で感染する確率が高く、感染対策としては、会話を減らすことが重要。呼気にもウイルスが含まれるが、会話の15分の1程度。満員電車で感染する人はいるが、それでもリスクは相当低い。 我々はすべきことは、換気、ソーシャルディスタンスの確保、マスクの着用、会話を出来るだけ控えることである。 講演要旨② *JTBグループの事業ドメインは「交流創造事業」。地域交流として、観光振興・地域活性化/観光地経営・まちづくり/行政事務局サポートを行っている。具体的には、JTBグループのネットワークによるマーケット(発地)側と受入れ(着地)側の連動により、受入れ地域の観点から地域固有の魅力を発掘・育成し、発地への流通を促進することにより、観光を基軸とした交流人口の拡大を図る取り組みである。また、日本の地域が抱える課題に正対し、人流、商流、情報流を生み出し、交流を創造することによって地方創生に貢献する「地域交流」に取り組むとともに、サステナビリティを重視した中長期の視点で地域の課題を解決するソリューションを提供し、「持続可能な地域づくり」の実現を目指している。 *旅行業として培った100年の知見・経験を活かし、地域の人々と共に、持続可能な「観光地経営・まちづくり」への参画を推進。観光振興を基軸とした食農観光、アドベンチャーツーリズム、ワーケーション、ヘルスケア・観光衛生マネジメント、ふるさと納税、観光ICT各ソリューションの提供など、様々な社会テーマ・課題に取り組んでいる。 *地域別、専門分野別の推進体制(47DMC推進体制)により、地域密着型で専門性の高いサービスを提供。全国を9つのエリアにセグメントし、各都道府県担当支店をフロントに、地域の特性を最大限に生かしながら、新たな交流を創造する持続可能な地域づくりをサポートしている。 *JTBグループは、「農業経営と観光は、もしかしたら一緒に地域活性に貢献できるのでは」を出発点に、農業を基軸とした観光地づくり、地域づくりを目指す取り組みを行っている。日本の「食」「農」と「観光」「文化」を結びつけ、国内外に“本物の日本の魅力”を伝えることにより交流人口の拡大と豊かな地域づくりに貢献する「食農観光プラットフォーム」を目指す。 *今後、人口減少・流出により地域の存続が難しくなる。基幹産業である「農業」・「漁業」と「観光」を組み合わせた新たな魅力づくりにより、交流人口を増加させ、「地域の自立」につなげていく。 *地域課題を解決するためには、農業・漁業経営者を主体とした地域事業者が、新たな魅力づくり、持続可能な事業づくりをする一連のプロセスこそが最も重要であり、これらを促進するために「食農観光塾」を実施する。“あるべき地域の姿”の実現へ向けて、①食・農・観光の視点を備えた地域リーダーの育成・発掘、②地域連携による事業創造の場を提供。意識の高い地域の地域事業者(農家、漁業、飲食業関係者、観光産業関係者等)約20名が全8回にわたり、地域の将来を考え、互いに連携し、魅力ある地域づくりにつながる事業づくりを推進するカリキュラムを組んでいる。観光専門家としてJTBグループ、農業経営専門家としてアグリコネクト社がサポート。地域リーダーに必要となる「地域活性力」「社会関係力」「経営力」の3要素を高めるカリキュラムを推進し、心構え【あたまづくり】から、最終出口を見据えた事業計画の作成【やることみがき】までを学ぶ構成となっている。本事業は、地域を越えたエリア全体での魅力発信や食農観光を越えた連携をビジョンとして掲げ、地域リーダーの育成による地域連携の促進と事業の創出を行っていくことを目指している。 *2023年3月OPEN予定の食と農と健康の産業団地「常総市アグリサイエンスバレー事業」を受託した。地域を越えたエリア全体での魅力発信や食農観光をビジョンとして掲げ、地域を担うリーダー=“地域づくり人材”の育成を起点に、アグリサイエンスバレー参入企業との連携による地域一体となった事業づくりを行い、食農による新たな価値・交流の創造、ICを起点とした常総市の魅力の発信につなげていく。同種事業として、茨城・佐賀・熊本・福岡で食農観光塾を実施しており、研修を通じて各地域で参加者が組織化し、様々な事業者を巻き込み、事業を行っている。 *その他の取り組みとして、「J’s Agri」「越谷イチゴラン」「地域の花を活用したアロマ商品開発事業」「るるぶキッチン」などがある。 *JTBの地域交流は、世界的な視野でSDGsを活用し、多様な事業者と共創しながら持続可能な地域づくりに取り組んでいる。