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産学官民交流事業

2021.10.01 第216回東三河午さん交流会

1.日 時

2021年10月1日(金)11:30~12:30

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 5階 ザ・グレイス

3.講 師

株式会社ランド 代表取締役社長/奥三河蒸留所 阿部 晃 氏

 ◎テーマ

『奥三河蒸留所は、新しい産業で稼げるか?成功の光と影』

4.参加者

39名

講演要旨

私は大学の土木科を卒業し、3年間ゼネコンで働き、エステティックFC本部に転職して企画・開発室長を務め、ペガサスクラブの渥美俊一先生の教えのもとチェーンストアやマーチャンダイジングについて勉強し、1992年に「奥三河蒸留所」の運営会社である株式会社ランドを創業した。当初は欧米のベンダーより精油(エッセンシャルオイル)、種子油を輸入し、国内メーカーへの卸事業を行っていたが、1997年に「店舗での小売り開始とチェーン化」、2008年に「良質な天然由来商品を志向し、最終商品まで開発するSPA(製造小売り)へ」、2019年に「国内製油を世界標準まで高めるために、地産地消と地域活性化の視点へ」という3つの転換点を経て、「奥三河蒸留所」の開設に至り、国内蒸留にて、精油の製造、化粧品材料の製造蒸留器の開発を一貫して実施できる体制を構築、開始した。
『良い精油は、良い産地、良い蒸留方法によって作られる』という基本的な考え方に基づき、良質な自然素材を求め、各国へ調達。現地の人々と植物の栽培、蒸留技術向上に対する指導を行い、エッセンシャルオイルの開発輸入を行ってきた。世界の産地・蒸留所から直接調達することで、継続的なパートナーシップを構築するとともに、最高の自然素材を視る眼を養ってきた。
2019年に新城市能登瀬(のとせ)に「奥三河蒸留所」を開設し、世界標準の日本産エッセンシャルオイルの製造を開始した。『良い香りのエッセンシャルオイルを作ろう』というコンセプトのもと、森林資源(ヒノキ・杉)から始め、蒸留精度の向上、エッセンシャルオイル製造・水蒸気蒸留器を独自開発し、技術を磨いてきた。また、「東三河」の特性を活かした素材の開発、人口減少・過疎等の問題解決、「奥三河蒸留所」を新しいアプローチで観光化するなど、ココでしか出来ない事、ココだから出来る、子供たちが自慢したい故郷、ずっと住み続けたい場所にすべく、奥三河のブランド化を目指している。
奥三河における香り産業の条件は、①世界の先端的な天然香りの抽出(蒸留)技術力、②それを活かし最終製品を作成できるマーケティング力、③産地の環境から香りの物質の植物を的確に導き出す、④マーチャンダイジングにより深く、広めて面を作る、⑤スピード感を持ち地元と共に短期で実績をつくり持続可能な仕組みをつくることであり、これらを大事にして経営を行っている。
天然香料輸入量は、健康意識の高まり、消費力の向上、食品添加物への懸念、COVID-19の発生による在宅時間の増加などの要因で拡大しているが、国内生産天然香料は低迷し続けている。私は「香り産業」を、人生をかけてやろうという意気込みで行っている。
「能登瀬(のとせ)ハッカ」は、原種を見つけて10年、3,000株まで増やし、蒸留にて全成分の取り出しを行い、良い成分のものは化粧品へ、その他はエッセンシャルオイルなどに加工して販売している。また、豊根村富山地区では、高齢化が進み10年以上放置された「柚子」をみんなで収穫しようと人口71人の地区に「柚子収穫隊」として参加費1,000円で250人を集め、1.5tを収穫、蒸留し、保湿力を考慮してハンドクリームを作った。最終製品を作れば売れていく。放置しておくのではなく、これをどうするかを考えることが重要である。
「奥三河蒸留所」は、何を考えて始めたのか?「香り産業」を構築し、奥三河でしか出来ないことに挑戦するためである。重要ポイントは、①世界一流標準のエッセンシャルオイルのみをつくる、②現素材(植物)の発掘、適している素材への試みと蒸留方法のイノベーション、③地域と共に、同時に植物・森林・観光でブランド化、その素材での地域の地位確立、である。
奥三河における問題点は、①人口減、高年齢化による労働力不足、②地元ブランド構築の為の自治体の意識、方法が弱い、③地元の意欲不足(このままでいい)、④外へのPR不足、PR方法チャンネル違い、⑤その場限りのイベントが多すぎる、などがある。
子供たちに対する香りの勉強会「身近な植物で蒸留体験」を開催している。「自然な良い香り」を実感できることで、持続可能な世界を知ることができる。ケミカルから自然に。小さい時から本物の香りを知ることが大事である。
『香りミュージアム』を豊橋駅前大通の「em CAMPUS」に設置し、自然豊かで南北に長い東三河の香りを創り、豊橋駅前を観光地にしたいと考えている。また、「奥三河蒸留所」は、何をやってもSDGsの全てに関わっている。ひと手間かけることが非常に大切である。今後も東三河の発展に向け、民間主導で頑張っていきたい。