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産学官民交流事業

2022.05.24 第451回東三河産学官交流サロン

1.開催日時

2022年5月24日(火) 18時00分~20時30分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

愛知大学 地域政策学部 教授 藤井 吉隆 氏

  テーマ

『食農環境コースの開設と開設後4年間の取り組み』

  講師②

設楽町長 土屋 浩 氏

  テーマ

『設楽町が新たなステップへ踏み出すために~設楽ダムを活用した持続可能なまちを目指して~』

4.参加者

76名(内、オンライン参加者 11名)

講演要旨①

 滋賀県長浜の稲作専業農家の長男に生まれ、農学部に進学。滋賀県に入庁し、在職中に農学博士の学位を取得し、大学教員へ転職。2015年の秋田県立大学を経て、2018年に愛知大学地域政策学部に着任し、「食農環境コース」で主に農業分野を担当している。
 愛知大学地域政策学部は2011年に設置され、「地域を見つめ、地域を活かす」をコンセプトとした新しい学問体系で、地域貢献力のある人材を育成している。2018年、既存の5つのコースに「食農環境コース」(定員25名)が新たに設置され、東三河地域に根差した農業・食を中心に学んでいる。学部の特徴として、学生たちが講義や実習で学んだ知識をもとにフィールドへ出向き、自主的に地域の課題を見つけ、地域の方たちとともに課題解決に取り組む「学生地域貢献事業」があり、いろんなテーマで活動を行っている。
 食農に関連する科目は当初から配置されていたが、全国有数の農業地帯に立地していること、食農と地域振興のつながり、農学と地域政策学の親和性の高さ、農業・食料を取り巻く環境変化などの観点から、食・農・環境を一体的に捉える学びを展開する「食農環境コース」が設置された。教員一同、食と農の社会的意義や新たな価値観、また今後の可能性の発掘を本コースの運営を通して実現できないかという想いを持って取り組んでいる。
 「食農環境コース」での学び(主要科目)は、6次産業化論、フードシステム論というように、農業という視点だけでなく、1次・2次・3次産業、生産から食卓までというように、全体を通して捉えていける科目が意識的に配置されている。また、「地域連携に基づく教育の推進」がコース運営の基本的な方針として位置付けられている。また、愛知大学豊橋校舎の食農関連施設として「食農環境実習室(食品加工等)」、「地域政策学部農業体験場」があり、このような施設を活用しながらコース運営を行っている。
 地域連携に基づく教育として、①食農環境演習Ⅰ(2年次秋学期:東三河地域の食・農・環境関連事業所の視察など、現地訪問8回・学内授業7回)、②食農環境演習Ⅱ(3年次集中講義:山形県置賜地域および東三河近郊の食農環境関連事業所での実習など、水田地域と園芸地域の共通点や相違点を理解し、持続可能な地域の発展について考える)、③研究法(2年次:地元企業との連携による実習など)、④ゼミ活動(2年次後半~:地域の事業者、関係機関と連携し、現場体験~調査研究~提案・実践までの取り組みを展開)、⑤資格取得(食の6次産業化プロデューサー:食農分野の人材育成、キャリア・アップを支援する検定制度)などがある。学生の声として、「食農環境演習により、問題意識に応じた新たな気づきがあった」という点は教員として深く印象に残っている。また、4年次には、学生の興味・関心に応じて食や農に関わる「卒業研究」を実施している。
 一期生(2022年3月卒業)の進路は、農業関係および食品関係への就職が他のコースよりも多く、演習受入れ先企業を志望する学生も見られた。また、農業関係の公務員や農業法人に就職する学生も見られたことから、今後も継続して学びの支援をしていきたい。
 「食農環境コース」は、地域連携に基づく教育活動を重視している。コース開設後4年間、事業者、関係者の皆様のご協力、ご支援のお陰で、地域と連携した教育活動を展開することができた。今後も、行政・企業・関係団体の皆様との関係を今まで以上に大切にして、互恵の精神のもと、学生・教員のレベルアップに努めながらコース運営(授業・活動計画)をしていきたい。
 水田農業地帯において、“稲作依存からの脱却”を目指して、園芸振興への取り組みが全国で加速しつつある。しかし、技術的ノウハウはない。園芸が盛んな東三河の農業は、これまで蓄積されてきた技術・ノウハウがあり、これは大きな強みである。今後は、こうしたものを産地振興、担い手育成につなげることが重要である。私は、引き続き「食農環境コース」の運営と地域に根差した活動を教員共々行っていきたい。

講演要旨②

 今年になって新型コロナウィルス感染者が増加(現在66名)しており、ウィズコロナでまちづくりに取り組んでいく。先週、設楽ダムの工期を令和16年まで8年延長するとともに、事業費が800億円増加するという大きなニュースが流れた。設楽町にとっては、非常に影響が大きい。ダム建設関連で進められる道路整備について、先般、現行計画どおりの早期完成を中部地方整備局に要望したところである。私自身、悪いことばかりではなく、チャンスが少し広がったという解釈をしている。
 私は設楽町(津具村)生まれで、令和3年の設楽町長選挙で初当選した。皆さんからは「顔がこわい」と良く言われるが、性格はおだやかである。趣味は、釣りなど。日々を楽しく過ごしたいという想いで、「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮想大賞」に2009年から17回連続出場している。
 設楽町では、新型コロナウィルス対策をしっかり行った上で、道の駅したら「1周年祭」、関係人口増加を目的としたオリエンテーリングイベント「奥三河ほうらいせん2days」、釣りイベント「親子でチャレンジ・フィッシング」、世界ラリー選手権「WRC啓発イベント」など、様々なイベントを実施している。また、設楽町の伝統芸能は、豊川水系の「田峰観音奉納歌舞伎」、矢作川水系の「貝津田の棒の手」、天竜川水系の「津具花まつり」、「黒倉田楽」というように、3つの水系によって異なる文化が受け継がれている。
 設楽ダム事業については冒頭でもお話ししたが、工期は延びても地域住民の生活利便性に直結する道路整備には早く取り組んでいただきたいと考えている。ダム湖周辺の3Dイメージ映像閲覧コーナーの開設、ネコギギ保護施設の一般公開なども予定されており、是非、設楽町にお越しいただき、ご覧いただきたい。
 ダムインパクトビジョンの実現に向けて、設楽ダム湖周辺整備の基本的な考え方は、『設楽町が、ダム完成後に、ダム湖やダム周辺の“自然(地域資源)”を活用し、地域住民・地域外住民などの“人の活動の場(協働)”を創出し、“まち(暮らし)”の持続に繋げていく』であり、基本方針は、(方針1)東三河地域のシンボルとなる空間の創出、(方針2)設楽ダムの周辺環境に適した集い・交流・憩いの場の創出、(方針3)設楽町で働く場が生まれ、地域内外の誰でも参画できる協働の場の創出、(方針4)森と水に関連したダム湖周辺の環境保全と地域活性化の融合、であり、関係者と連携して進めていきたい。
 ダム湖周辺利用のデザインとしては、大名倉、川向、八橋地区を一体的に整備するとともに、山村都市交流拠点施設の整備を進めていく。地域活性化方策の検討では、「アウトドアを活用したまちづくり」を地域振興の方針とした。これまで、令和8年度完成でいろいろな計画を立ててきたが、令和16年にマッチしているか十分注視して検討を進めていきたい。
 ダム周辺施設としては、①大名倉公園(山間の豊かな緑と川の水辺や湿地の生き物等、多様な自然とのふれあいを楽しめるアウトドアアクティビティの拠点)、②川向公園(優れた眺望と水辺を活かした体験活動が楽しめる観光スポット)、③八橋公園(ウバヒガン桜の広場を中心としたメモリアル公園と湖畔の水辺を活かした屋外活動拠点)を計画している。
 現在、試験施行として、旧したらの里で行う「アウトドアイベント」、メープルシロップを試験的に製造する「森林の365日経営」、空き家(古民家)を活用した「分散型宿泊施設の体験プログラム」などの取り組みを行っている。
 山村都市交流拠点施設は、設楽町及び東三河地域全体の地域振興への寄与を目的に設置され、目指す姿は“地域の魅力をつなぎ、設楽町・東三河を輝かせる施設”である。主体は、東三河広域連合となるが、5.9haという広大な面積を誇っており、今後具体的な中身をともに考えていきたい。
 設楽町は、設楽ダム建設をきっかけに大きく変わります。今後、東三河の人々、民間の事業者の方、その他多くの方と連携、協働していくことが必要であり、まさに変わるチャンスです。新たなステップを踏み出すために、様々なことに挑戦していきたい。こんな設楽町ですが、どうぞよろしくお願いします。