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会員サービス事業

2022.08.26 2022年東三河地域問題セミナー 第3回公開講座

1.開催日時

2022年8月26日(金)14時00分~16時30分

2.開催場所

豊橋商工会議所 4階 406会議室

3.講 師

名古屋大学 大学院環境学研究科 附属持続的共発展教育研究センター
臨床環境学コンサルティングファーム部門 教授 高野 雅夫 氏

4.テーマ

「中山間地の持続可能な地域づくり~愛知県や岐阜県での取り組みを事例に~」

5.参加者

26名

【講演要旨】

私は再生可能エネルギーの研究をずっとやっている。豊根村にペレット工場が作られた時に学生と一緒に勉強にいったのが最初である。そこから再生可能エネルギーの研究が始まり、今は豊田市の山間部で木質バイオマス発電の事業を立ち上げられないかということを地元の新電力会社と一緒に研究している。こうして再生可能エネルギーを扱ううちに、中山間地に若い人がいないと話が始まらないということに気がつき、同時並行で過疎問題の解決に向けて取り組んでいる。

中山間地域のいろいろな問題、公共交通・獣害・地場産業衰退、これらは相互に関係があり、中心に人口減少問題がある。現在の中山間地域においては、高齢化による人手不足のため、移住した若い人が地域になじんでくると、ちょっとした手伝いなど皆が仕事を頼むようになる。頼まれ仕事である程度暮らせるようになるとともに、地域のニーズと自分のやりたいことのマッチする部分が見えてくる。こうして自分の仕事が形成されるという新しい形ができる。地域活性化は担い手がいないと進まないため、まず担い手をどう確保するかが課題となる。

名古屋大学大学院環境学研究科持続的共発展教育研究センターでは、ホームページに、小地域ごとの簡易人口推計ツールを掲載しており、小さな地区の将来人口推計が可能である。一例として新城市作手地区の事例を紹介する。ベースに2015年と2020年の国勢調査のデータを使用しており、この5年間の変化の趨勢がそのまま続くと2020年現在の4000人から2060年には1200人、2080年には800人ぐらいになり、ほとんどが80代以上で若い人がいないという地区になる。このツールの良い所は、移住者が来たらどうなるかをシュミレーションできるところである。仮に年間5世帯が移住し、出生率が1.8であると仮定した場合、人口は減るが途中で減少が止まり、子供の数も維持される。

2014年に政府が都市住民に向けたアンケート調査で、農山村への移住希望があるかを調べたところ、3割ぐらい移住希望があり、年代別で一番多いのは20代であった。2005年の前回調査と比較したところ、30代と40代の子育て世代の移住希望者が顕著に増えている。実際行政の支援策利用者数を基に岐阜県が他県からの移住者数を集計したデータによると、2011年の300人から右肩上がりに増加し、2020年には1500人を超えている。世帯主の年齢構成は20代から40代が多く、30代と40代の子育て世代が約半数を占めている。場所はどこでも良いわけではなく、移住者が集まるホットスポットが点々とできている。仕事とはニーズに対して、自分がやりたいこと、できることが重なった部分になる。田舎では地域のニーズや資源が非常に良くわかるので、重なった部分が見つかりやすいと思う。田舎で起業するローカルベンチャーが流行っている。「競争相手がいない」、「行政の支援がある」、「マスメディアから注目される」というように、都会より起業がしやすいと思う。ホットスポットには、必ずこうした暮らし方がある。

最後に地域が移住定住のホットスポットになるための実践的な話をする。ぜひ地域でアンケートを取っていただきたい。内容は自宅の10年後はだれか住んでいるかというものである。設楽町の名倉地区で行ったアンケートでは2割ぐらいは空き家の回答があり、その回答者に、空き家になった後の予定を聞くと、7割以上はそのまま空き家にしておくという回答であった。つまり、ほとんどが放置された空き家になるということである。家は人間が暮らさないと植物に覆いつくされてしまう。廃屋になる前に活用することが大事である。

空き家物件については、土地や建物の相続・登記など問題もあるまま放置されているものが多い。家主に連絡を取り、困りごとを聞き、住民が知恵を出し合い解決策を検討、家主に提案し、話し合いながら解決を探っていくという粘り強い取り組みが重要になる。住民主体で取り組むのは大変であるが、これをやらないと空き家物件が出てこない。家主の困りごとが解決できると無事空き家バンクに登録となる。多くの移住希望者は情報収集に熱心ということもあり、空き家バンク登録後、2週間ぐらいで移住希望者が決まることが多い。

 

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