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産学官民交流事業

2022.11.15 第457回東三河産学官交流サロン

1.開催日時

2022年11月15日(火)18時00分~20時30分

2.開催場所

ホテルアークリッシュ豊橋 5F ザ・グレイス

3.講師①

愛知工科大学 工学部情報 メディア学科 助教 神邊 篤史 氏

  テーマ

『感性データ分析に基づく新製品開発』

  講師②

NTT西日本(株) ビジネス営業本部 エンタープライズビジネス営業部
デジタルデータビジネス担当課長 松本 貴裕 氏

  テーマ

『地域と共に歩むDX取組のご紹介 ~LINKSPARK NAGOYAでの事例~』

4.参加者

58名(内、オンライン8名)

講演要旨①

【感性工学とは?】
 私はDXの世界を直接ではなく、人間の感性を通じた心理的側面のものづくりへの反映、感動できる商品を届ける技術を研究している。皆さん感性という言葉を聞く機会があると思うが、感性自体が曖昧なものであるため、人の心を数値化することで見える化し、ものづくりへ反映していく手法を紹介する。
 商品開発のアプローチとしては、シーズとニーズという2つの方向がある。顧客ニーズからのアプローチにおいて、従来は営業担当者が顧客との会話からヒントを得たり、エンジニアの経験で開発するといった形であった。そこに加わった新たな科学的手法が感性工学である。モノがあふれる時代になり、消費者の製品に対する欲求も大きく変化している。こうした中、人に喜びと満足をもたらす製品・サービスづくりが求められている。感性工学は顧客の願望・感性を分析し、それを製品・サービスの設計に取り込むことを目的とした感性と工学を結びつけるものである。
【感性データに基づく製品設計手法】
 感性工学の基本技術を紹介する。プロセスとしてまず人間の感性の測定法を知る必要がある。次に感性測定の実験の方法を把握しておく。その上で製品の属性を分類する方法、統計や機械学習による感性の解析として、感性構造の分析や製品設計の設計要素と感性の関係の分析などを行い、最後に分析データに基づいて実際の製品を形作る方法をどうしたら良いか検討するものである。こうした段階を経て感性ニーズに応える製品が開発されていく。従来の人間工学では、人間の動作・生理という面が分析されて人間中心の設計と言われていたが、これをさらに拡張して、心にも適応する製品づくりとするものである。感性の測定方法は、例えば「かわいい」といった形容詞に対し、その製品がどの程度当てはまるか主観評価で答えてもらうといったもの、脳波・心拍数など生体信号、眼球運動や顔の表情、行動や態度などいろいろな手法で測る取り組みがされている。感性のデータ分析で製品の応えるべきニーズが決まれば、それを満たす色や形などの設計要素を回帰分析的手法で統計的に導き出すことが可能となる。また、感性工学の領域でAIやVRへの応用も可能で、形容詞をコンピュータに入力するとそれに見合ったデザインが出てくるというものも研究成果として実現されている。
【感性工学手法によるものづくりの今後】 
 感性価値を創造することにより、顧客が感動する商品作りが可能となる。製品を通じた感性・感情の誘導により、人間のパフォーマンスが上がる可能性もある。リハビリなど、さまざまな分野で、人の活動が楽しくなるといった支援へ応用できれば良いと考えている。

講演要旨②

【LINKSPARKとは】
 最初にLINKSPARKというDX推進のための共創ラボを紹介する。2019年にスタートしたブランドネームで、大阪に次いで名古屋が2拠点目で、福岡へと拠点を拡げている。当社は地域を支えるICTの会社として、日々高まるDXニーズに呼応し、地域のお客さまと一緒にゴールできるチームを作るべきと考えており立ち上げたもので、私は施設の運営マネージャーを務めている。名古屋は製造業に携わる方が多いため、施設には製造業を支えるようなイメージのカラーを使っている。年間200件程度のDX案件に携わり、協働で考えながらエリアの横展開を支えている。
 東海エリアにおいてのDX案件は、自治体、製造業の顧客に対する支援が約半数となっており、他地域と比較して製造業の割合が高いことが、東海エリアの特徴となっている。LINKSPARKにお客さまという立場で来場された後、関係を深めて一緒に考え、新たなパートナー企業も一緒に加わって共創によるDXを推進している。
【具体的な事例の紹介】
 具体的な事例を紹介する。最初は岡崎市と行っている「地域イノベーション創出事業」。「地域イノベーション促進」と「街区活性化モデル事業創出」についてデザインワークショップを交えて、課題募集型ウェブプラットフォーマーや地域に根差した交流会運営会社と連携して実施した事例である。ここでは、ワークショップを3回6テーマで行った。公民連携のイノベーション創出には、連携を深めた複数の共創パートナー間の相互補完関係が大きな契機となることがわかった。発想・知識・行動といったことによる共創プラットフォームをリードする高度人材群を育成することが必要な要素になる。
 2番目の事例として名古屋市の円頓寺商店街におけるデータを活用した地域経営について紹介する。リニア開業予定による住民の世代変化など、時代の移り変わりや、地域ニーズの変容を的確にキャッチし、継続的な商店街の刷新を行い、地域住民等に愛され続ける商店街を目指した取り組みである。2台のAIカメラと名古屋大学の学生の協力を得た複数台のカメラで人流データを取得、性別や年齢層など属性の把握を行なうとともに、GPSデータも加えてどこから来場したかを調査したものである。商店街の発案でこのデータをもとに産学官連携して何かできないかを検討している。その一環として、AIラボの開設および商店街課題解決ピッチコンテストを開催した。
 最後の事例は民間企業と行ったデータ利活用によるベテランの技術継承である。ベテランはイレギュラーに対する対応のスピードが速く、業務への予見・対応力が高い。これを可視化して次の世代の人に伝承することが課題であった。学習する過去の実績データを取り、その中から一部取り出し、未来予測をさせ、実際の過去データと対比することで実証して分析する手法でLightGBMというプログラムを使い、ほぼベテランの人の手で作ったものと同じ結果を出せるようになった。この結果若手が未来に発注すべき工数確保のデータを作っても、ベテランが作成したものと遜色がないものにすることができ、発注行為のムダが減り、現在その企業に実装されている。
 データの流れを振り返ると、データを集める、貯める、分析する、可視化するというシンプルなものである。ここで重要になるのが使う人の気持ちになり仮説を立てることである。これからも地域の新たな価値創出・発展をサポートしていきたいと思う。