2023.02.03 第229回東三河午さん交流会 1.日 時 2022年2月3日(金)11:30~13:00 2.場 所 ホテルアークリッシュ豊橋 4階 ザ・テラスルーム 3.講 師 (株)西川時計店 専務取締役 成岡 智人 氏 テーマ 『穂の国をコンセプトにしたブライダルブランド』 4.参加者 40名 開催案内(ダウンロード) 講演要旨 私が1年程前から取り組んでいる”穂の国”をコンセプトにしたブライダルブランドのプロジェクトについてお話させていただく。結論から申し上げると、東三河の地域密着の結婚・婚約指輪「honowa」は一企業の物販の話しであったが、観光、移住、他社のビジネスへとプラスしていくという流れの話しである。どうしてこうなったのか?自分自身も全く想像していなかった。 「宝石時計西川(株式会社西川時計店)」とは、1933年創業で三代目・野末京子が社長を務めており、創業90周年を迎える。現在、宝石・ジュエリー、時計の販売と修理、婦人用バッグ等の販売を行っている。私は、1974年生まれの48歳。1997年に株式会社オリエンタルダイヤモンド(DeBeersと住友商事の合弁会社)に入社し、ダイヤモンドを全国の百貨店・小売店に卸販売していた。2006年に西川時計店の社長の次女である妻と出会い、2011年3月に初めて豊橋に移住し、大阪に転勤するまで約4年半在住。2020年8月の会社退職を機に、2020年11月に再び豊橋に移住し、2021年3月に株式会社西川時計店に入社。合計7年ほど豊橋に住んでいるが、生粋の東三河っ子というわけではない。 「honowa」誕生のきっかけは、東京から豊橋への移住である。東京は、何もかもが混雑している。光化学スモッグで空気が汚れ、星なんてほとんど見えない。一方、豊橋は時間がゆったりと流れ、山にも海にも1時間以内。豊橋で何が一番驚くかというと、隣近所の人が野菜や果物を持ってきてくれる。人が親切。「豊橋、東三河はいい場所ですね。」そう言うと、必ずこの言葉が返ってきます。「何にもない。」「そんなことないですよ。」と言うと、中には「絶対何もない!」と全力で否定する方もいる。謙遜というと美徳であるが、時には自虐的にさえ聞こえることもある。自分としては「何もなくはないのに。」と悶々とした想いがあり、これがスタートのきっかけである。 ブライダルブランド製作は、集客型イベントが年商の80%以上を占める西川において、顧客の高齢化、コロナ禍での集客減でイベント売上が15%ダウンしている状況を鑑み、マーケット規模として東三河8市町村で2,900組弱の婚姻組数、13億円規模の市場があるので、前職で携わっていたブライダル事業を再構築しようと考えた。最近、ホテルアークリッシュ豊橋様と提携し、お客様への利益還元サービスとして、指輪の価格でディナー、花束、プランナーのサポートが付いてくる「プロポーズプラン」の販売を開始した。 新しいブランドを立ち上げた方が良いと考え、地域密着を念頭に、ブランド名は「穂の国」をテーマにした指輪「honowa」とした。「wa」には、輪・環・和などのいろんなテーマがある。「穂の国」は西暦600年頃(大化の改新前)の地名で、「ふるさと」、「ホーム」、「許してくれる場所」、「受け入れてくれる人がいる場所」などのワードを書いていくと、共通するテーマ「当たり前にあるものなんてひとつもない」というキーワードに結びついた。 指輪の工程としては「鋳造」と「鍛造」の大きく二つがある。鋳造は、金属を型に流し込んで作るものであるが、もともと指輪は「途切れない」という意味があるので、ドーナツ状にして成形していく鍛造を選択した。鍛造は、強度、硬度が高く、変形しにくい、傷がつきにくい、継ぎ目がない(途切れない輪)という特徴がある。デザインコンセプトは、「東三河の8つの地域」から一つずつ大切にしたいものとして、晴(ハレ)、祈(イノリ)、燈(トモシビ)、波(ナミノアヤ)、実(ミノリ)、蔦(ツタノフチ)、天空(テンクウ)、清流(セイリュウ)の8つをピックアップし、デザインに落とし込んだ。「東三河の8つの地域」の画像が必要と思い、公共目的の団体へ向かい借用を願い出たが、答えは「NO」。担当者から「個人的に好きなので、出来ることがあれば何でも協力する。」という言葉をいただき救われたが、「あなたの考えは浅いです。あなたは東三河で生きる人々と話したことはありますか?」と言われ、「honowa」という指輪を作る私に対し、問題提起をしていただいた。そこから、東三河の人々と話す旅が始まった。四谷の千枚田(生活資源)、砥鹿神社(穂の国)、八百富神社(観光と信仰)、吉田神社(手筒花火)、渥美半島自然観察ガイド(足元にある宇宙)、環境ボランティアサークル「亀の子隊」(ゴミの減量)、あかばね塾(アカウミガメ)、奥三河☆星空の魅力を伝える会(星の美しさ)、その他、奥三河観光協議会、東栄町観光まちづくり協会、設楽町観光協会、naori、賀茂神社、元津具村役場、水上ビル、JAひまわりバラ部会など、「東三河・穂の国」を知っていくという意味で皆さまにご協力いただいた。自然・信仰・文化・祭り・店。当たり前にあるものなんてひとつもない。輪・環・和に、もうひとつの「wa」があることに気付き、ひとりひとりが主人公である人生の「話」を加えた。 穂の国の大切なものを伝える「12の物語」として指輪のホームページで紹介し、指輪の物販だけでなく、そこで生きる人々の芸術や商売などの営み、自然の美しさ、結婚し、移住する人々が不安ではなく、楽しみになるように、いろんな外部リンクを貼り、お客様に情報発信するルートを作った。 西川時計店がある通りは、店主の高齢化、後継者不在での閉店、若い世代が集まる店の減少などの問題がある。これから、移住、観光、自然、ビジネス、若い世代が集まり活気ある街、子育てし易い街になると、若い世代が集まる街、笑顔があふれる街になる。何かできることはないかと考え、若い人が集まる「水上ビル」との提携を思い付いた。「honowa」を買われた方に「水上ビル」で使える3,000円のクーポン、「パーク500」のチケット2時間分を西川が負担するとしたところ、17店舗に賛同いただいた。結婚指輪は「結婚式だけでなく、長い人生で輝く」をテーマに、指輪とそのお店の商品を組み合わせ、インスタグラムを使って拡散した。 これからの「honowa」はどうするか?「結婚するなら穂の国(東三河)で!」。東三河は流出地域。結婚指輪は名古屋に買いに行く。流入することは出来ないか?名古屋から豊橋に買いに行く。そんなことになったら嬉しい。前職のとき、「結婚式するなら淡路島!」と言っていた。明石海峡大橋が開通し、神戸・大阪に流出していたものが、日本の神様のいざなぎ、いざなみのプロポーズの場所であることをPRしたところ、逆に流入が起きた。東三河でも是非実現したい。 最後に「honowa」のプロモーションビデオをご視聴いただきたい。ロケ地は2ヵ所、テーマは「結婚はうれしいもの」。私は7年しかここにいないが、「東三河にはもっと素晴らしいものがある。こんなにいい場所がある。」という言葉を聞きたい。その時に「honowa」が本当の意味で完成するのだと思う。