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広域連携事業

2023.02.08 第64回研究交流会

1.開催日時

2023年2月8日(水)14時00分~16時00分

2.開催場所

豊橋市民センターカリオンビル6階 多目的ホール

3.講  師

愛知工業大学 総合技術研究所 教授 近藤 元博 氏

  ◎テーマ

「脱炭素社会に向けた産業の動向と港湾の目指すべき姿~三河港の新たな役割と連携の在り方~」

4.参加者

32名

講演要旨

【世界の脱炭素の潮流と自動車産業】
 世界において温暖化が進むのは化石燃料使用が主原因であり、このまま進めば熱波や干ばつが増え食糧生産に影響が出るとともに、洪水のリスクもあり、飢餓が世界で8,000万人に達する恐れがある。また、最大30億人が慢性的な水不足に苦しむことになる。
 大気中の二酸化炭素濃度は300ppmつまり0.03%が従来の値の上限であったが、現在は0.04%に上昇している。この僅か0.01%増が温暖化の原因となり、人類が苦しんでいる。過去は0.03%を超えることのない範囲で、太陽の周囲を回る地球の軌道の影響で数値が上下していた。しかし産業革命以降、特に1950年代からの経済成長、石油化学の発達により世界中のエネルギー使用量のレベルが変わった。1971年と2018年を比較すると、先進国の排出量は変わらないが、中国は経済発展で4倍以上に増加、世界の排出量の1/3を占めるようになっている。今後インドなどが経済発展すると中国同様にCO2排出量が急増することが予想される。経済発展にはエネルギーが必要であり、世界が経済発展するとCO2が増える。
 排出されたCO2の53%が森林や海水に吸収され、半分が大気に残って温暖化を引き起こしている。温暖化の進行により、さらに危惧されるのは永久凍土にメタンである。永久凍土が溶けるとメタンガスが発生する。メタンガスはCO2の25倍の温室効果である。CO2削減をしないといけないのは、温暖化の進行で永久凍土のメタンを出さないようにするためでもある。永久凍土の溶解によるメタンガスの発生は、地球が元に戻れない分岐点になる。
 1992年の京都議定書採択から最新のCOP27までの状況は、各国の利害関係や温度差もあり、足踏み状態が続いている。2030年に1.5度上昇に留めるためには、CO2排出量を毎年400億トンに収める必要性がある。しかし2022年は406億トンで過去最多となっており、ウクライナ情勢を受けた天然ガス争奪などの影響で石炭、石油の使用も増加、このままいくと2030年には1.5度以上の気温上昇となる。この目標はイノベーティブな活動なくして達成できない。エネルギーの根本的な使い方を変えるなど活動を思い切って変える必要がある。
 IPCCの最新の報告によると、自動車は電気自動車に変えるのが脱炭素に貢献するとなっている。世界の自動車メーカーは巨大な投資を行い、EV販売シェア拡大を狙っている。トヨタは全体の35%にあたる350万台を2030年に販売するよう4兆円規模の投資を行う。他の自動車メーカーも巨額を投じて開発を進めている。
 こうした状況を後押ししているのは欧州である。2035年にはエンジン車販売禁止。あと7年で欧州ではエンジンの新型車が出てこない状況になる。また、環境規制はアメリカ最大のマーケットであるカリフォルニア州が大きな影響を与えている。カリフォルニア州でも2030年以降はHVも売れなくなる。欧州ではグリーンニューディールでリチウムの奪い合いも予想され、電池を作る工程のESG遵守も重要視される。電池のバリューチェーンのカーボン低減、リチウムの域内のリサイクルというように、地産地消でないと今後通用しなくなる。

【エネルギー問題の動向】
 化石燃料に依存しないエネルギーの自給自足が求められる。安定供給、経済性、環境負荷の要素が非常に重要になる。ロシアのウクライナ侵攻を契機にG7各国は化石燃料離脱の動きを加速させている。日本に関しては、ロシア産天然ガスの影響が大きく、サハリンから天然ガスが来なくなるとエネルギー危機を招く可能性がある。
 石油や天然ガスの開発には莫大なコストと時間がかかる。化石燃料である油田やガス田の新規開発は投資資金調達も容易ではなく、欧米のメジャーも今後実施予定がないため、エネルギー価格は高止まりが続く状況になる。日本としては、過渡期に原子力を使いながら再生可能エネルギーを増やしていくという流れになると思う。

【脱炭素社会における港湾の役割】
 港湾は気候変動に適応するとともに、気候変動緩和の取組が重要であり、どちらにもビジネスチャンスがある。輸出入貨物量の99.7%を取扱うのが港湾であり、日本経済の国際競争力強化や国民生活の質の向上に大きな役割を担う。また港湾の背後には多くの人口・資産が集積しており、災害からそれを防護する施設としての役割も大きい。気候変動緩和に向けては、エネルギーセキュリティと脱炭素を両立する政策が求められ、カーボンニュートラルポートが重要なファクターになる。水素・アンモニアの利活用、CO2を使ったメタンガスや燃料の生成などの次世代型エネルギー産業など、港湾は新しいビジネスの拠点になる。

【この地域での取り組み】
 三河湾近郊はバイオマス発電所が多く、太陽光・風力も活用されており再生可能エネルギーのポテンシャルが非常に高いため、この電気を使って水素を製造することが優位に働く。また知多工業地帯は水素基地を受入れる素地があり大きなポテンシャルを持っている。名古屋港や四日市も含めて連携し、水素のサプライチェーンを確立、アンモニアも含めて利活用を進めていくことが必要になる。
 CO2リサイクルについても、現在コストは合わないが、2040年ぐらいには採算に乗る可能性がある。ゼロカーボンを目指した地域連携として、まず水素・アンモニアの受入HUB拠点を整備し、CO2を資源として活用するカーボンサーキュレーションによりカーボンニュートラルポートが実現できる。
 ゼロカーボンを目指す中で、脱炭素の実現と日本経済の発展を同時に実現させることは可能である。実現に向けては、エネルギーの需要構造の転換と、産業構造を変えていくことが重要な視点である。港湾はほぼすべて製品の通過点であり、ゼロカーボンプラント、カーボンニュートラルが揃うことで、カーボンニュートラルインダストリー、カーボンサーキュレーションの拠点として非常に高いポテンシャルがあり、変化も大きい。
 愛知県はカーボンニュートラルに貢献するポテンシャルが高い地域である。伊勢湾・三河湾で連携してエネルギーを中心としたカーボンニュートラルポートを実現できれば、愛知県の製造業を中心とした産業に大きなメリットとなり、世界中から企業誘致に向けた強みとなる。そのために、伊勢湾・三河湾で各港が個別最適を目指すのではなく、連携による全体最適を進める必要がある。ゼロカーボンで持続可能な地域の実現が、地域自体のブランドバリューになる。

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