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会員サービス事業

2023.04.19 2022年度東三河地域問題セミナー 第1回公開講座

1.日 時

2023年4月19日(水)14時00分~16時30分

2.場 所

豊鉄ターミナルビル 豊橋駅前展望会議室

3.講 師

名古屋大学 環境学研究科 教授 西澤 泰彦 氏

4.テーマ

「東三河の身近な歴史的建造物を考える ~遺産を未来の資産に繋ぐ試み~」

5.参加者

26名

【講演要旨】

建築分野で主に建物の歴史を研究している。ある時、建物を褒めることが重要であると気がついた。建物を褒めて、価値を発信しないと建物がどんどんなくなってしまうからである。本も執筆しているが、本を書くだけでは社会還元できないため、歴史的建造物をどのように残して使い続けていくかということに関わるようになった。身近な所では名古屋大学の豊田講堂で、国の登録有形文化財に登録したが、学内の専門家の中で所見が書けるのは誰かという話があり、私が所見を書いた。皆さんがご存じの豊橋ハリストス正教会聖堂についても、国の重要文化財指定を受けるための調査を行った。そのような活動をしながら、名古屋市では地元の皆さんと街歩きをすることも行っている。

竣工後一定の年数(約50年)を経た建物を歴史的建造物という。「年を経る」のは一つの価値(歴史的価値)である。文化財建造物は、文化財保護法に基づいて、文化財として位置付けられた建造物であり、単体の構造物として、歴史上または芸術上価値の高いもの、伝統的建造物群として、周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成し、価値の高いものがある。法律に謳われている価値は専門家が判断して、皆さんが納得すれば文化財建造物になる。その中で国が、重要な建造物を重要文化財に指定・選定し、都道府県や市町村も自分たちの行政区域の中で重要なものをそれぞれ文化財指定している。国はもうひとつ登録文化財という制度を持っており、文化財原簿に登録するという作業を行っている。これまでの建造物文化財の指定を見ると、文化庁では、芸術性より歴史上価値の高いものに重きを置いてきていたように見える。建築後50年を過ぎた建造物について、ある価値が認められると登録文化財に登録できるという話になっており、全国で登録文化財の物件数が1万件を超えた状況であるが、まだ未設定・未登録の物件が数多くある。

国指定の建造物指定文化財は、愛知県内に84件あり、東三河では豊橋にある東観音寺多宝塔など9件である。県指定の建造物指定文化財について愛知県は46件と少なく、この近くでは賀茂神社の本殿が県指定の建造物文化財になっている。市町村指定は、市町村独自の判断がされていて興味深く、この近くでは、豊橋市の龍拈寺の山門がある。他には、愛知大学公館、新城市の旧鳳来町消防団第7分団第2部屯所など、それぞれの市町村が独自の判断で指定文化財にしている。国の登録文化財は愛知県全体で551件である。豊橋市では、豊橋市公会堂、愛知大学記念館、小鷹野浄水場ポンプ室など、豊川市では今泉医院など、新城市では旧大野銀行本店など、蒲郡市では三谷町北区山車蔵、旧蒲郡ホテル(蒲郡クラッシックホテル)がある。登録はどういうことかというと、文化庁の持っている文化財リスト(文化財登録原簿)に建物の名前を書くということが登録という行為を示している。また、未指定・未登録の文化財建造物も東三河地域に多くある。

遺産を未来の資産に繋ぐために5つの提案がある。一つ目は、身の回りのものに目を向けようということである。それにより埋もれた遺産・資産の発掘ができる。例えば豊橋市内で身の回りの散策してみると、吉田城の外堀内側土手など、今も痕跡が残っており、非常に興味深い。二つ目は歴史的建造物を評価しようということである。歴史的建造物を評価することは、専門家だけでなく誰にでもできる。感覚・主観において、人それぞれの思いや愛着が生まれてくる。三つ目は歴史的建造物から学ぼうということである。建造物には、関わった人の工夫がちりばめられていて学ぶことが多くある。四つ目は使い続ける意思と努力に敬意を払おうということである。建物を使い続ける方に敬意を払うことが重要である。五つ目として最後にあらためて歴史的建造物を楽しむことが大事であることを伝えたい。例えば、各地の公会堂を見ることは楽しく、多様な公会堂を堪能することは、公会堂を愛する第一歩にもなる。ぜひ皆さんも各地の公会堂を見にいっていただきたいと思う。

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