2023.09.04 2022年度東三河地域問題セミナー 第3回公開講座 1.開催日時 2023年9月4日(月)14時00分~16時30分 2.開催場所 豊橋商工会議所 4階 406会議室 3.テーマ 「ドローン技術の社会実装に向けて」 講演①:『東三河ドローン・リバー構想 ~ドローン・エアモビリティ を活用した新産業の集積を目指して~』 講師 株式会社田村組 代表取締役社長 田村 太一氏 講演②:『東三河の森林とデジタル化による未来』 講師 有限会社森山環境科学研究所 森山 誠氏 講演③:『ドローンを使った物流問題解決を目指す取組(静岡県の事例)』 講師 HMK Nexus株式会社 代表取締役社長 内田 貴啓氏 4.参加者 44名 開催案内(ダウンロード) 【講演要旨①】 東三河ドローン・リバー構想推進協議会は、ドローン前提社会を起点として活動を行っている。ドローン前提社会とは、ドローンやエアモビリティが当たり前のように空を飛んでいるという社会である。東三河ドローン・リバー構想推進協議会の設立は3年前、現在、会員数は66社(団体)で協力会員は38社(団体)となっており、豊川市および新城市を中心として活動をしている。 実際にやっている活動は大きく分けて以下の4つになる。 1.研究会の活動 ①物流研究会・・物流の自動化・高速化による輸送ネットワークの構築。 ②産業省力化研究会・・農業や林業、建設業におけるインフラの点検分野などについて、作業省力化。 ③災害対応研究会・・災害発生時にドローンを飛ばして、いち早く情報収集を図り、会議室等で関係機関が一同に集まって情報共有し、効率的な初動対応を行う。 2.社会実装を推進する地域の次世代人材の育成 3.実証実験および支援制度 ①実験フィールドの提供 ②実証実験に対する補助金支給 ③展示会への出展 4.官民連携の取組 ①スカイピークとの地方創生に関する包括連携協定締結 ②国際航業、トラジェクトリーとの地方創生に関する包括連携協定締結 東三河にはさまざまな自然環境、都市部と山間部といった多面的な要素、国会議員や行政の積極的なリーダーシップ、技術系の大学の存在、製造業の集積、これらは他地域と比較した優位性になる。今後実証実験の数を増やして、新しい産業を東三河で創っていきたい。 【講演要旨②】 2年ほど前から東三河ドローン・リバー構想推進協議会に参加、作業省力化の森林の部門について事務局を担っている。森林での問題は、森林の調査である。森林では、森林の価値・在庫を見たいために、木の本数、高さを調べるということが多くある。また林業の従事者は、減少傾向であり、さらに高齢化が進んでいる。 デジタル化を進めていかないと調査の効率化ができない。 デジタル化の手法 ①人がバックパックにレーザー機器を入れて背負い、歩いて調査 ②ドローンによる測量 ③航空測量 ④人工衛星データを使った測量 東三河ドローン・リバー構想推進協議会で実施した実験について、まず森林調査は、面積が広いので一部を調査して、全体に掛け合わせるため、一部の抽出地を調査するというのが基本になる。人とドローンで測定したものを比較してみようと実験を開始したが、あまり精度を求められないこともあり、それぞれどういう特徴があるのかというのを調べる実験となった。 実際の実験では、ドローンが上空から森林を撮影した後、高度を落として森林の中を飛行した。ここでの大きなポイントは省力化である。例えば5haの森林を調査するのに人力では1時間55分とであったが、ドローンだと34分になる。次に10haとなると3時間55分対38分になる。面積は倍になってもドローンは一気に飛んでしまうためあまり時間が増えない。現地の作業滞在時間の比較では、70%以上の作業の省力化効果があった。ドローンで森の中を飛んだデータで木の太さを見る場合、飛ばし方で結果が変わることも判ってきた。今後使えそうな技術であるが誤差が出ているため、この誤差をどのように考えるかが課題である。 デジタルツインがしっかりすれば、VRはゴーグルをつけて森林の中にいるようなリアルなバーチャルな世界が体験できる。これを土地を相続したが遠い場所にいて足を運べない地主に対して、土地の境界線の確認に使えるのではないかと考えている。また、防災減災への活用として、6月2日の豪雨の時に崩落した林道をドローンで撮影しデジタル化することで、範囲など測定ができた。修復にかかる費用など、一度ドローンを飛ばした後は、オフィスで詳細の確認や検討ができ、ドローンであれば車両が入れなくなった先の被災状況の調査も可能となる。このようなアイデアも、今年度の東三河ドローン・リバー構想推進協議会の実証実験で行いたいと考えている。 【講演要旨③】 当社はハマキョウレックスグループで、2022年12月設立の新しい会社である。会社設立後すぐの2年前に浜松市役所と、親会社のハマキョウレックスで申請した助成金を受領し、実証実験を進めた。ドローン以外にもEVに特化した宅配会社の実現を目指している。 当社はネットスーパーの仕組みを渋谷のベンチャー企業と組んで自前で組み立てている。システムの強みは、配達時間をこちらがコントロールできるということで、配車がスムーズにできる仕組みが組み込まれていることがポイントとなる。東京では同様の仕組みで大手コンビニチェーンの注文をEV配送自転車で配送している。 ドローンを事業化しようとする場合、誰からその運送費もらうのかが1番重要となる。当社の親会社には多くの荷主様がおり、そこに寄り添った形でドローン輸送の提案をしていこうと考えている。 ドローンの課題は航続距離である。今回はVトールといわれるオスプレイタイプの機種を導入し、物流の実証実験を静岡県庁と一緒に行う。物流でVトールを使うという試みは日本初になり、航続距離を伸ばしと積載重量を増やしたタイプの開発も国内のメーカーであるエアロセンス社と一緒に進めている。 静岡県庁との実証実験 ①医療機器会社本社から海を越えて病院へ注射針を運ぶスキーム。市街地を飛ばすことを視野に入れ、レベル4を見据えた実験。スタート地点である医療機器会社本社に隣接した川の上を飛んで海に抜け、漁港の近くの病院に届けるという形で最終調整している。 目視者なしで、人を立てずに荷物の受け渡しをどう行うかがポイントとなる。 ②中山間地でネットスーパーの仕組みを使い、システムから受注を受けてドローンで山間地の遠隔地まで一気に商品を運ぶ。通ってはいけない場所など制限がある。 上記の2運航の実証実験を計画している。現在毎週のように静岡県庁と打合せを行っている。実験協力企業との物流契約、改良型Vトール導入、ドローンポート整備など社会実装に向けて今後も挑戦を続けていく。