2024.11.01 第247回東三河午さん交流会
1.日 時
2024年11月1日(金)11:30~13:00
2.場 所
ホテルアークリッシュ豊橋 4階 ザ・テラスルーム
3.講 師
東郷ブランド米事業検討会 会長 加藤 稜唯 氏
テーマ
「地域で作るブランド米『決戦の刻』」
4.参加人数
35名
講演要旨
私は平成10年生まれの25歳で愛知県新城市の東郷地域の出身である。東郷地域は旧新城市内ではあるが、自然が豊かな地域である。職業は医療法人でレントゲン技師をしている。普段は高齢者と接する機会が多く、胸部の写真やCT、バリウムを飲んでいただく胃透視撮影などを担当している。地域活動としては、新城市若者議会において第3期の議長を務めた。こちらは現在10期目となっているが、「新城市若者条例・新城市若者議会条例」に基づき、平成27年4月1日に設置されており、若者が活躍できるまちにするため、若者を取り巻くさまざまな問題を考え、話し合うとともに、若者の力を活かすまちづくり政策を検討している。予算提案権があり、予算の使い道を若者自らが考え政策立案して市長に答申し、市議会の承認を得て、市の事業として実施される仕組みであり、日本で初めて条例で定められたものである。また、新城市市民自治会議の委員も務め、「新城市市長選挙立候補予定者公開政策討論会条例」の策定に関わった。そして、新城市は平成の大合併の後に地域自治区制度を採用し、新城市内を10の地域自治区に分けて予算を分配し、地域住民が集まって協議し、予算の執行方法を決める地域協議会が設けられ、その委員を務めて4年目になる。その他新城青年会議所で本年度は副理事長を務めており、消防団の活動などにも参加している。実家がクリーニング店を営んでいる関係もあり、両親から自営業は地域に支えられているので、時間のある時は地域のために貢献するよう教えられて育ってきた。
東郷ブランド米事業検討会は、新城市東郷地域には、日本全国で起きている状況と同様に、耕作放棄地の増加や米農家の後継者不足といった地域課題が存在している。米の単価を向上させることが課題の解決につながると考え、東郷地域協議会にて地域自治区予算として建議を目指したが、新城市農業課より「行政主導での実施は厳しい」との回答があったために、東郷地域協議会メンバーや行政区長を中心に令和4年9月、「東郷ブランド米事業検討会」という任意団体を立ち上げ、ブランド化に向けて活動を開始した。実際に東郷地区区長会に出向いてアンケートを行ったところ、17人中16人の区長が耕作放棄地と米農家の後継者不足を課題と考えており、課題感として誤っていないことが確認できた。団体を立ち上げて直ぐに株式会社あみや商事へ地域課題とブランド化について相談し、10月には令和4年度の新米から「長篠設楽原決戦場米」として「お米工房あみや」、「長篠設楽原PA」などで試験販売をスピード感をもって実施することができた。
その後豊橋商工信用組合が新城市内で実施した「ロッカク塾」ビジネストークカフェに参加し、デザイン・ クリエイティブを活用した地域振興の取組を大阪にある合同会社manoと話がつながり、ブランド米の開発について相談した。「令和5年度新城市めざせ明日のまちづくり事業補助金」というコミュニティ・ビジネス創業事業として、地域ビジネスにより地域課題を解決するという部門に応募し722,000円の交付が決定し、令和5年4月より新ブランド米のデザイン開発が無事スタートできた。そしてできたブランド米の名称が「決戦の刻」である。「設楽原決戦場」跡地を代々守り続けてきた農家が大切に育てたお米としてこの名前に決めた。最初は別のネーミングの提案が多く出されたが、地域の方と話をすると「設楽原決戦場」の「決戦」の文字は外せないという意見が多くあり、またプレ販売をした時のネーミングが「長篠設楽原決戦場米」であったことから、ブランド名称が「決戦の刻」に決まった。東郷地域の歴史と自然が育んだ力強く凛とした味わいの米として、勝利宣言をするような力強い拳をモチーフとしたブランドロゴを作成し、そこには東郷のお米の豊かな実りと味わいの勝利宣言でもあり、決戦日和の時にこそ『お米』で力をつけ、戦う現代人の後押しとなるよう願いを込めている。
そのため「決戦の刻」を縁起米や応援米として使って欲しいと伝えながら、販売を行っている。パッケージには「お受験決戦日」「面接決戦日」「スポーツ決戦日」「プレゼン決戦日」「発表会決戦日」「告白決戦日」という現代社会のさまざまなシーンが決戦というイラストがパッケージの裏面に描かれており、そのようなシーンで食べてくださいといった形で販売をしている。パッケージは4号分入ったコーヒー袋タイプと、それぞれ2号分が入った三色キューブタイプの2種類を用意している。三色キューブタイプは黒のパッケージが玄米、銀が7分づき米、金が精白米となっている。コーヒー袋タイプも金キューブタイプと同じ精白米が入っているが、キューブタイプは真空パックがされており半年味が変わらないということで贈答用としても使えるような差別化がされており、キューブタイプが見栄えよく収まるパッケージの箱も用意している。またふるさと納税の審査もクリアできたために、返礼品として販路を拡大している。「決戦の刻」取り扱い店舗として、「お米工房あみや」や道の駅「もっくる新城」などの店舗で地元中心の対面販売と、店舗によっては全国にも対応できるネット販売を行っている。また「湯の風HAZU」では旅館で提供される食事の米が「決戦の刻」になっており、今後グループの他の施設でも採用いただけることとなり拡がりを見せている。
ここで「決戦の刻」がどのようなブランド米かの話をする。地域課題の解決という大きなテーマがあり、多くの農家が無理なく参入できるようなブランド米を目指している。生産場所は新城市東郷地域に限定し、米の品種は一番多く栽培されている「あいちのかおり」とした。条件としては色彩選別を行っている。令和4年度は生産数が20俵で買取価格が1俵あたり16,000円であった。令和5年度は生産数が48俵で買取価格は前年度同様の16,000円であった。令和6年度は生産数が120俵の予定であり、買取価格は18,000円となっている。これまで販売量が伸びており、今後も伸長していくことができるようしっかり頑張っていきたいと考えている。販売は生産者・販売者・任意団体の関係で継続を保つ形にしている。高く売りたい米農家と安く買いたい米穀店は、どうしても利害が対立してしまうことが多いために、東郷ブランド米事業検討会が間に入って、米農家は農家会員として入会、米穀店は販売会員として入会し、東郷ブランド米事業検討会が米農家・米穀店間の調整をして取扱数量・売買価格の調整を行い、ブランド米の活動を継続的に続けていけるような体制としている。こうした活動には地元をはじめ多くの企業に東郷地域の米ブランド化の趣旨にご賛同いただき、協力していただいている。株式会社あみや商事には、初期から米穀店としての情報共有や販売の協力をいただいている。豊橋商工信用組合には、コンサル会社の紹介をはじめプレスリリースや記者発表の実践もサポートいただいた。合同会社manoには、パッケージデザインからブランド名、ブランドマーク作成まで趣旨に賛同いただいて、破格の金額で作成に協力いただいた。株式会社戸田工務店には毎月定例で行う会議の場所をご提供いただいている。
ここから私たちの実際の活動について話をする。「決戦の刻」を広めるための取組として、まず地域のお祭りやイベントに積極的に出店している。まずは地元の人々に知ってもらうことが大切と考えており、11月も2回ほどイベントに参加して、PR販売やおにぎりの試食会などを行う予定である。次に新城市立東郷中学校へ昨年度プレゼント企画を実施した。「決戦の刻」のコンセプトは、決戦の前に食べてほしいということであり、昨年1月受験生86名にご祈祷をした「決戦の刻」をプレゼントした。鳳来寺山東照宮において、食べた人が本来の力が発揮できるようなご祈祷をいただいている。実は現在販売している「決戦の刻」すべてにこのご祈祷を受けており、効果があると考えていただければと思う。新聞などにも掲載されたため、認知度向上に向けて今後も継続していきたいと考えている。また新城市立東郷東小学校にて「地域の宝をかがやかせるために自分たちにできることを考える」という小学3年生の総合学習のゲスト講師を担当した。小学生に対して話をするのは難しかったが、児童の皆さんはしっかり私の話を聞いてくれた。11月に開催予定の学習発表会においても「決戦の刻」を取り上げていただけるとのことで、そこにも参加して協力する予定となっている。別のイベントでたまたま会った時も、小学校で私の講義を受けた児童から話しかけられて、こうした地元の小中学校での活動が、子供に対して地域への理解を深める効果があるのと同時に、その親世代にも伝わっていくというという気付かされた授業であった。
話が変わって、東郷地域内で耕作放棄地の開墾を今年実施した。令和6年度東郷地域活動交付金おいて412,000円の交付が決定し、長篠・設楽原の戦いで勝敗の決め手となった馬防柵が復元されている場所のすぐ近くの新城市竹広地区にて、耕作放棄地を地域有志と90a開墾した。90aで70~80俵ぐらい収穫できればと期待していたが、しばらく使われていなくて土地が痩せていたこともあり、実際は30~40俵の収穫であった。地域の皆さんから賛同されているので、この活動も継続していきたいと考えている。
最後にまとめとなるが、「決戦の刻」は、認知度向上と販売数増を目指していく。現在は生産数が100俵と限られているが、認知度向上と販売数量を増やすことを進めていくことが、結果として東郷地域の米の単価の向上に実現に結びつく。その結果、最初に地域課題として話をした東郷地区における耕作放棄地の削減、米農家後継者不足の解消につなげたいと考えている。