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産学官民交流事業

2021.02.05 第209回東三河午さん交流会

1.日 時

2021年2月5日(金)11:00~12:00(※時間変更)

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 4階 ザ・テラスルーム

3.講 師

株式会社海みらい研究所 代表取締役 丸﨑 敏夫 氏

 ◎テーマ

『うな丼の未来を明るく、夢の実現へ』

4.参加者

38名

講演要旨

私は、愛知県立三谷水産高等学校長を6年間務め、定年退職後、ウナギ養殖の基礎研究などを手掛ける会社「株式会社海みらい研究所」を設立した。業務内容は、ウナギ仔魚養殖用飼料及び養殖装置の開発、天然ウナギの資源保護に関する事業、水産・海洋関連産業コーディネーター業などである。
世界の水産業は、動物性タンパク質への消費圧力の増大を背景に、「漁業」から「養殖業」へと変遷してきている。70年ぶりの「漁業法改正」(2020年12月1日施行)は、養殖業に民間参入を可能にした。
(ウナギの雑学)
*ウナギと日本人との関わりは5,000年以上であり、「蒲焼き」は鎌倉時代から、「うな丼」は200年前に江戸の芝居小屋の金主であった大久保今助が芝居の合間に大好きな蒲焼きを食べるために、冷めないように熱いご飯の上にのせて取り寄せたことが始まりある。
*ウナギの血液には毒があるため刺身では食べない。
*関東風は背開き、関西風は腹開きである。
*江戸時代の蒲焼きは現在の価値に換算すると5,000円であり、現在の価格より高い。
*ウナギの養殖は明治12年服部倉治郎が、東京深川千田新田に2haの養殖池を作って養殖を試みたのが最初。明治29年には奥村八三郎が愛知県神野新田で養鰻を始めた。
*ウナギは高カロリーで、高度不飽和脂肪酸が食肉中一番多く、オレイン酸はオリーブオイルの2倍もあり、健康食品としての価値が高い。ビタミンAは一食あたり成人男性約2倍の必要摂取量、カルシウムは食肉中最も多く、牛乳より多い。ウナギの食材だけで成立する料理店が多く存在しており、まさに「スーパー栄養食材」である。
二ホンウナギは平成26年に絶滅危惧ⅠB類としてレッドリストに掲載され、持続的利用が危ぶまれる貴重な天然資源であるにもかかわらず、ウナギの漁業生産はほとんど天然種苗(シラスウナギ)に依存せざるを得ない状況である。持続的な漁業生産を可能とする天然資源の涵養や、人工シラスウナギの量産化が求められている。ウナギ種苗(シラスウナギ)の生産技術開発の状況であるが、平成22年に完全養殖、平成28年には計画的な採卵と年間数千尾の生産が可能となったが、量産化(年間1億匹)には至っていない。
会社設立のきっかけは、三谷水産高校勤務時に文部科学省より「スーパープロフェッショナルハイスクール(SPH)」の指定を受け、テーマとして「大学等の研究機関との連携による二ホンウナギの資源確保と完全養殖化に向けた基礎研究」を行い、ウナギの人口ふ化に成功したことである。本件は、当時「ウナギ完全養殖に挑戦」というタイトルで、中京テレビの「キャッチ」で放送された。
現在は、①極めて低い生残率の解消、②成長促進を伴う餌の開発と成長に適した栄養成分の探索、③飼育水の長期維持や水槽入れ替え作業等の軽減を目指した養殖装置の開発、以上の課題を解決するための新しい飼育方法を開発し、大量かつ低コストにシラスウナギを安定生産することを目的とし、三谷水産高校と株式会社ニデックの支援のもとで連携し、特許出願内容を主体に研究に取り組んでいる。
天然ウナギの資源保護を涵養する「石倉かご」(ウナギの伝統漁「石倉漁」をアレンジしたもの)の取組みなどの事業も行っている。豊橋市天然うなぎ資源保護再生プロジェクト協議会において、全国で初めて汐川干潟で「石倉かご」を実施し、銀うなぎの再捕獲に成功し、ウナギの行動形態の解明に大きな一歩となった。また、水産・海洋関連産業のコーディネーター業として、ウナギ資源の有効活用を目指した「ウナギの魚醬」等の商品開発への取組みのほか、二ホンウナギのSDGsとして「ほの国ウナギみらいラボ」研究会を設立し、各関係者が連携・協力してウナギ資源の有効活用・保護の取組みを行うことを目指している。