2022.11.04 第227回東三河午さん交流会 1.日 時 2022年11月4日(金)11:30~13:00 2.場 所 ホテルアークリッシュ豊橋 4階 ザ・テラスルーム 3.講 師 NPO法人ひとすじの会 事務局長 杉浦 博人 氏 テーマ 「群像劇『神野新田物語』~逆境に生きた人々~」 4.参加者 25名 開催案内(ダウンロード) 講演要旨 私が脚本を書いているひとすじの会の演目は、皆さまに支えていただいて、これまで4回×4日の16回をプラットの主ホールで公演している。次の12月は5回目の公演となる、群像劇「神野新田物語」である。「神野新田物語」は全部で3つのお芝居から構成されており、これまで1話2話を公演してきて、今回の第3話が最終話ということになっており、すべての話において「逆境に生きた人々」ということがテーマとなっている。登場人物は神野三郎さんが中心で、三郎さんの一代記といっても良い作品である。 NPO法人ひとすじの会は、演劇をする団体で、明治以降の近代の先達を主人公にするということで、豊橋の礎を築いた方を取りあげている。最初は製糸業で玉糸製糸を興した小淵しちさんの芝居「ひとすじの糸」という芝居を、2016年と2017年に行った。その後、「神野新田物語」を上演しており、これが2018年と2021年の8月であり、今回が5回目の講演になる。「神野新田物語」としては今回が第3話となり、最終話である。人物としては、神野太郎さんや豊橋市長だった河合陸郎さんが主な登場人物である。演劇は、まず脚本から出演者を集めて作っていく。また、支えてくださる方が必要で、パンフレットもお配りしているが、たくさんの企業や個人の方に支えていただいている。そして見ていただく方、この3つの要素で成り立っていると思う。 神野新田の堤防を築いたのは、服部組の服部長七である。毛利新田との決定的な違いは、服部長七の三和土を改良した「長七たたき」という人造石工法によって強靭に作られているということである。神野新田には、尾張や美濃、伊勢などから多く小作農として入植したが、最終的に残ったのはわずかである。北西の風に砂が舞い上げられる過酷な環境の中、収入が1日15銭の日雇い賃金のみという厳しさもあり、この小作生活に耐えきれず神野新田に見切りをつけて北海道など他地域に転出した人も多かったからである。また、地域内においても、軍隊関係に転職して出ていく人も多かった。 こうした暮らしを「神野新田物語」第2話でも取り上げている。夜なべ仕事で縄をなう。菰を編む。それでも借金に喘ぐ。そのため、味噌や醤油を隣同士で融通し合う。物語の中では、借金を残したまま夜逃げをした権三という人物が登場している。 今回の「神野新田物語」は第3話で最終話である。「戦争を生き抜いて」という副題をつけているが、主な登場人物は、神野三郎・りき、神野太郎・花子、河合陸郎・愛子という3夫妻6人。第3話の出来事として、人造羊毛工場の誘致による戦前の豊橋の工業化と農業漁業者との対立の騒動から物語がスタートする。昭和7年に不景気により明治銀行が破綻、神野・富田家は精算のために神野新田を明治銀行に譲渡し、預金者には神野新田土地株式会社の株式を渡した。その後の太平洋戦争、昭和20年に行われた神野新田の農地解放、昭和28年の13号台風の襲来による神野新田の堤防の決壊と一丸となって立ち向かった人々の姿、神野太郎と河合陸郎との出会いから始まった、豊橋港や臨海工業地帯の整備など後の大事業に繋がる豊橋の新時代の予感などが主な内容である。ぜひ多くの方に生の舞台公演をご覧いただきたいと思う。