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産学官民交流事業

2022.12.02 第228回東三河午さん交流会

1.日 時

2022年12月2日(金)11:30~13:00

2.場 所

ホテルアークリッシュ豊橋 4階 ザ・テラスルーム

3.講 師

音羽米を育てる研究会 副会長 鈴木 晋示 氏

  テーマ

「ソーラーシェアリングを利用したお米作り」

4.参加者

31名

講演要旨

 本日は、「音羽米を育てる研究会・副会長」という立場でお話しさせていただく。私が経営する会社は「農業法人こだわり農場 鈴木」で、普段から行っている“こだわり”で勝負してみようと会社名を決定した。事業内容は、水稲・麦・大豆の生産・販売、田植え・稲刈り等の各種作業受託、米の乾燥・調整受託・苗の販売である。平成元年より消費者の方々からの働きかけで水稲において減農薬栽培を始め、現在は2haの水田でJAS有機米にも取り組んでおり、生協、飲食店、地元直売、ネット通販などで販売している。音羽地区は、鹿・猪・猿などによる害獣がひどく、4~5年前から被害の多い田んぼや日照状況が悪い田んぼを菌床シイタケ栽培のハウスへ転用し、クック・マートなど地元のスーパーで販売している。
 私は7代目であり、どんなふうに経営していけば良いか、中小企業家同友会への加入における経営指針書の作成で、経営理念を「農を極める」、①地域を元気にします、②環境にやさしい農業をします、③かかわる人すべてを笑顔にします、とした。2012年2月より経営方針発表会を実施し、年に1回開催している。2021年にSDGsを取り入れた「2030年ビジョン」を策定した。自社の10年ビジョンに合わせてSWOT分析を行った結果、機会として「エネルギーシフト」、脅威として「気候変動」という課題が浮かび上がってきた。就農して35年になるが、米作りは年々難しくなってきている。お米が取れない理由は、気候変動による高温、病気、害虫によるものが多く、農家にとっては死活問題である。
 SDGsへの取り組みは、2019年に中小企業家同友会の地球環境部会に参加し、そこでSDGsの話題提供があって興味を持ち、2021年より経営指針書に取り入れたことがきっかけである。5つの経営方針の1つである「エネルギーシフト」はSDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に該当し、2030年には地産地消のエネルギーを蓄電して利用、全農業生産にクリーンエネルギー使用、農機具をすべてEV化、2025年には全体の30%と目標を設定し、ドローンによる農薬散布、刈払い機の一部EV化、背負い式動噴のEV化などを実現してきた。また、「こだわり農場2030年ビジョン」を社員と共有し、達成するために取り組んでいる。目標3「すべての人に健康と福祉を」では、想像すべき未来を「安心安全な食糧生産」と位置付け、有機農業の推進による「有機米の増産・シイタケの有機JAS取得」を具体的目標に設定し、「音羽米30%・シイタケ生産量の10%」を25年数値目標として掲げている。SDGsの取り組みの結果、エンジンからEV化における作業効率の改善、新聞記事への掲載、採用に役立つなどの多くのメリットを享受できた。
 「音羽米研究会」の始まりは、35年前、広島出身の「伊藤玲子さん」と父・鈴木農生雄との出会いである。伊藤さんは「一人の有機農業者を支えてきたが限界を感じた。もっと広い目で見て、世界レベルでの環境問題等を考えたときに一人の農業者ができることは限られる」と訴え、父は地域で大きな問題に取り組む「音羽米研究会」を発足させ、農薬使用回数18成分・化学肥料100%から、農薬使用回数5成分・有機肥料100%に改善した。音羽米の生産量は、初年度は約50俵であったが、現在は会員約80人が音羽地区耕作面積の約半分の田んぼで生産し、約4,200俵となっている。
 ソーラーシェアリングのきっかけは、中小企業家同友会の農業部会で群馬県へ報告者のお願いに行った際にソーラー事業の話を聞いたことである。まずは、施設の屋根にソーラーパネルを設置したが、田んぼの畦(あぜ)を利用することに着目し、「田んぼ電気プロジェクト」を発足させた。ソーラーシェアリングでつくった電気を「生活クラブエナジー」に販売し、生活クラブ組合員に販売するとともに、生活クラブエナジーから電気を事業用として買戻している。現在、800Kw(50kwが17~18カ所)であるがメガソーラーを目指して、残り200Kwの増設を検討中である。
 150筆の圃場を1haで20圃場に大規模化する「県営豊川萩地区土地改良事業」が令和5年度に事業開始となり、注目している。また、「音羽米35周年 中山間地ルネッサンス事業」として、全4回のワークショップを開催し、中山間地域に適した再生可能エネルギーの活用や、音羽米づくりを通じた地域活性化策などでアイデアを出し合う取り組みを行っている。次世代に残していきたい、育んでいきたい価値として、音羽米を残すこと、消費者と生産者の繋がりを残すことなどが挙げられた。12月11日に「持続可能な農業について」と題したシンポジウムを開催するので、興味のある方は、是非参加していただきたい。