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広域連携事業

2023.06.26 第24期報告総会・記念講演会

1.開催日時

2023年6月26日(月)14時00分~15時30分

2.開催場所

豊橋商工会議所 4階 406会議室

3.講  師

拓殖大学 商学研究科 商学専攻 教授 松田 琢磨 氏

  テ ー マ

「世界のコンテナの荷動きとコンテナ航路誘致」

4.参加者

44名

開催案内(ダウンロード)

講演要旨

本日は「世界のコンテナの荷動きとコンテナ航路誘致」をテーマに、お話しさせていただく。

【直近のコンテナ輸送動向】
世界の荷動きが減少に転じたのが2022年後半であり、それ以降荷動きの調子が良くないのが現状である。世界の荷動きにおける基幹航路は北米航路と欧州航路であるが、北米は2022年後半から荷動きが減少している。欧州も同様に2022年後半から需要が落ちているが、北米と比較し底堅さが無い印象である。荷動きは需要が前提としてあり、ここからは需要がどうなっているかの話をする。
 北米航路はアメリカの需要が重要で、なかでも小売・住宅がかなり大きな割合を占める。引越しする際には家具などを買う、リフォームをするなど波及効果が大きいためである。しかし、インフレ防止のための利子率上昇に合わせて住宅金利が上がり、新築住宅販売・中古住宅販売ともに大きく減少している。また、2021年1月貨物が着かない港湾や内陸での混雑状況がピークを迎え、ウォルマートなど小売企業は2022年の年末商戦に向けて発注を増やしたが予想まで需要が伸びなかった。2022年向けの貨物を発注した際には需要が底堅かった。そのため小売企業は荷動きの増加に応じて発注をしたものの、受注された卸売業者は何かあったら困るため、少し多めに発注をしたようであった。さらにメーカーが多く用意してしまって、発注量が増幅していくブルウィップ効果が発生していた可能性が高く、これが2022年後半以降の過剰在庫につながった。
 欧州は、ロシア・ウクライナ関連貨物がなくなったことで需給が軟化した。加えて、欧州の中で1番荷物の輸入が多いドイツの消費が弱かった。コロナ禍を経て、最近は外食や旅行などの体験にお金が使えるようになり、相対的に物に使うお金が減ってきて、コンテナで運ばれるようなものを買わなくなる動きも荷動きの減少につながっている。
 また、2022年後半から新しいコンテナ船が投入されるようになり、2025年の末には、2022年末と比較し600隻程度増加、船腹量でも約600万TEU、2割程増えることが予測されている。荷動きも増加はするものの、平均増加率は2030年までは年3.2%ぐらいという話で、2025年までには荷動きは10%ぐらいしか伸長しないため、供給過剰になりやすい状況になる。

【2023年のコンテナ輸送の見通し】
 直近の運賃を見ても、アフリカ・南米向けを除けばコロナ前の水準にほぼ戻っている。物価上昇を考慮すれば、むしろコロナ前より悪くなっているという見方もできる。スポット運賃の下落に合わせて、契約運賃も後追いをするように下がっており、海運会社としては厳しい状況で、荷主側も悩ましいところであろう。しかし、原油価格の高騰と環境対応投資の必要性もあり、運賃が下がっているにも関わらずコスト自体が上がっている。燃料費上昇に対応できないレベルまで運賃が下がってしまうと、海運会社は経営上厳しいため何らかの対策が必要になる。これまでのアライアンスの再編も運賃が下がっている局面で起きている。

【地方港の活用・優位性】
 教科書的な話になるが、地方港としての競争力を持つためには、ビジネス上の付加価値がないといけない。参考に海外の事例を紹介する。マラッカ海峡に面するシンガポール、タンジュンペラパスとポートクランについて、専門家にインタビューして点数をつけてもらったことがある。その結果、IT、物流施設、人材がシンガポールの競争力の源泉として挙げられた。他の港湾間競争であるが、増加する中国北部の貨物をめぐる釜山港と、青島・大連・天津各港の競争では、積み替え港として釜山港が使われるケースが多い。これは、釜山港の経由を推奨する物流会社の存在が大きな要因になっている。こうした事例が地方港の参考になると思う。
 また、コロナ禍でサプライチェーンに関して問われるようになったのは、複線化・冗長化・短縮化という方策をどう取っていくかである。そのために、他港と比較して優位に立つ手段を考えることが重要となる。他にも、地政学的な変化、産業の変化や企業活動が変わる中でどういう対応を取っていくかが港の魅力を上げていくポイントになる。

【地方港のコンテナ貨物誘致戦略】
 最後、コンテナ誘致戦略ということで簡単にインセンティブの話をする。地方港は60港近く存在、距離が近いところも多いため稼働率向上を意図したインセンティブ競争に陥りやすい傾向がある。釜山港が航路を誘致したいということでかなりインセンティブを使っている背景もある。しかし、インセンティブをつけたからといって、一般的な傾向として外貿コンテナ取扱量は増加しない。ポイントは荷主向けのインセンティブの額が、コンテナひとつあたり数千・数万円という金額が多く、ドレージの費用もカバーできず、厳しいことが第一点として挙げられる。そして最終的に、どこの港もインセンティブ出していますというようになり、財政力勝負に陥ってしまう可能性がある。
 助成制度を残すのであれば、未来に何かを残すような形で使って欲しい。例えば、地元のフォワーダーの育成などインセンティブ競争に陥ることをどう避けるか考えるべきである。きれいごとではいかないよという意見があるのは承知しているが、本日は研究者という立場で、少し概念的な話をさせていただいた。

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